肺がん手術後の反回神経麻痺

 頸部神経叢に端を発し、右は鎖骨下動静脈のレベル、左は大動脈弓下のレベルで反転して、声門を支配する反回神経

 胸部の手術後、しばしばこの反回神経が麻痺を来す。

 そして、声がかすれる。

 時には嚥下障害の原因になる。

 いま、食道がん術後の患者さんが、私が勤務する病院に長期入院して、嚥下リハビリに取り組んでいる。

 

 2018/09/08-2018/09/09に仙台で開催された第24回日本摂食嚥下リハビリテーション学会に参加してきた。

 耳鼻咽喉科の先生が興味深い発表をしていたので、以下に要約を示す。

 右肺癌腫術後に左反回神経麻痺を起こすって、どんなメカニズムなんだろう。

● O30-8:胸部外科手術後の誤嚥性肺炎の予防

・胸部外科手術後、抜管の際にルーチンで耳鼻咽喉科医が反回神経麻痺をチェックするような仕組みを立ち上げた

・肺癌手術例166人のうち、チェックができたのは147人(88.6%)で、反回神経麻痺が残ったのは計14人、左反回神経麻痺は147人中13人(8.9%)で、左肺癌手術後の左反回神経麻痺は10人、右肺癌手術後の左反回神経麻痺は3人、右反回神経麻痺は147人中1人で、右肺癌手術後の患者だった

・胸部大動脈瘤手術例187人のうち、チェックができたのは106人(56.7%)、うち19人に反回神経麻痺を認め、左麻痺が多かった

・術後、70−80%の患者で、反回神経麻痺から回復した

・一部の患者では、声門機能回復手術として、甲状軟骨形成術反回神経再建術(反回神経断端と頚部神経ワナを端々吻合)を行った

・肺癌手術後の反回神経麻痺について、管野らは8.8%(3/34)の合併率と報告している(管野ら、肺癌、155−162、1992)