非小細胞肺癌に免疫チェックポイント阻害薬が使えるようになる少し前から、
「放射線治療後の患者では、血中にがん特異抗原がばらまかれていて、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果が高まるらしい」
という、いわゆるabscopal effectの存在が囁かれていた。
いま、他院から紹介を受けて入院診療しているがん患者がいる。
右上縦隔原発、上大静脈症候群合併、両側癌性胸膜炎合併、がん性心膜炎合併の状態。
外科的縦隔生検の結果、胸腺癌あるいは原発性肺扁平上皮癌の診断(個人的には、おいおい、という感じの病理診断だが)。
上大静脈症候群に対しては、姑息的胸部放射線終了後。
前医で転院前日に右胸膜癒着術が行われ、胸腔ドレーンを抜去した当日に転院。
転院目的はリハビリだった。
結局、胸水も心嚢液も全くコントロールできておらず、それぞれドレナージと癒着術をして、最近になってようやく落ち着いた。
縦隔生検の検体を取り寄せてドライバー遺伝子変異、PD-L1の検索をすると、遺伝子変異はなかったが、PD-L1は50%陽性。
・・・さて、どうするか。
原発性肺癌と考えれば、言うまでもないがPembrolizumab初回治療の対象だ。
しかし、姑息的とはいえ胸部放射線照射が終わったのが4月の話。
規定では、胸部放射線照射終了から半年間はPembrolizumabが使用できないらしい。
結構効果は期待できそうなのだが、制限時間との戦いになっている今日この頃。
秋まで落ち着いていてくれるといいのだが。
こんなんだったら、免疫チェックポイント阻害薬を使用する患者では、何らかの形で頭部以外の腫瘍に放射線治療を行えば、治療成績が向上するのでは?
こうしたコンセプトの臨床試験をやってみると面白いような気がするのだが。
免疫チェックポイント阻害薬は、放射線治療の役割すら変えてしまうのかもしれない。
Effect of Previous Radiotherapy on Outcome With Pembrolizumab in NSCLC
By Matthew Stenger
Posted: 6/6/2017 10:57:05 AM
Last Updated: 6/6/2017 10:57:05 AM
ShaverdianらがLancet Oncologyに単施設の後方視的解析結果として報告したところによれば、進行非小細胞肺がん患者に対すPembrolizumab第I相試験であるKEYNOTE-001試験において、過去に放射線治療歴のある患者では治療成績がよかったとのことだ。
今回の検討では、UCLAからKEYNOTE-001試験に参加した97人の患者が対象となった。このうち、42人(43%)がPembrolizumab初回投与前に何らかの放射線治療を受けていた。38人は頭部以外の部位に放射線治療を受けていて、24人は胸部への照射を受けていた。経過観察期間の中央値は32.5ヶ月だった。
無増悪生存期間中央値は、何らかの放射線治療を受けたことのある患者では4.4ヶ月、ない患者では2.1ヶ月(ハザード比0.56、p=0.019)、頭部以外への照射歴がある患者では6.3ヶ月、ない患者では2.0ヶ月だった(ハザード比0.50、p=0.084)。生存期間中央値は、何らかの放射線治療を受けたことのある患者では10.7ヶ月、ない患者では5.3ヶ月(ハザード比0.58、p=0.026)、頭部以外への照射歴がある患者では11.6ヶ月、ない患者では5.3ヶ月だった(ハザード比0.59、p=0.034)。
肺毒性は、胸部放射線照射歴のある患者では24人中15人(63%)で、ない患者では73人中29人(40%)で、治療に関連すると判断された肺毒性はそれぞれ13% vs 1%だった。