悪性胸膜中皮腫と免疫チェックポイント阻害薬

 そろそろ、悪性胸膜中皮腫の領域でも免疫チェックポイント阻害薬に関する知見がまとまり始めた。

 肺癌に比べると患者数が少ないだけに、第II相試験の結果とて無視できない。

 2レジメン以上の治療歴がある患者が対象となると、尚更である。

 

 追跡期間が短いので、治療成績が今後どのように展開するかを見守る必要がある。

 また、有害事象に関しても気になるところである。

 全体の30%は2コースまでで治療を終えざるを得なかったこと、そんな中で約80−90%の患者が何らかの有害事象を経験していること、併用療法群の約5%(61人中3人)が治療関連死に至っていることを考えると、演者が語るほど「軽微な」「十分対応可能な」有害事象ではないように思う。

 今回は、まとめるのを忘れていたPembrolizumabに関する記事についても併せて触れておく。

ASCO 2017: Early Research Suggests First Immunotherapy for Mesothelioma on the Horizon

By The ASCO Post

Posted: 6/6/2017 10:51:20 AM

Last Updated: 6/6/2017 10:51:20 AM

 悪性胸膜中皮腫は稀な悪性腫瘍だが、その発生頻度は年々増加している。本疾患は通常アスベスト暴露に関連して発生するとされ、診断後の生存期間中央値は13から15ヶ月程度とされる。初回化学療法の後、例外なく病勢進行に至り、治療対象者のうち半数以上が6ヶ月以内に治療を中断せざるを得なくなる。現在のところ、悪性胸膜中皮腫に対して効果的な他の治療法はない。

 フランスで遂行されている第II相臨床試験、MAPS-2試験の中間解析結果によると、術後再発患者に対する免疫チェックポイント阻害薬は腫瘍細胞の増殖速度を遅らせた。治療開始から12週間の段階で、Nivolumabを投与された患者の44%で、Nivolumab+Ipilimumabを投与された患者の50%で増悪を認めなかった(ASCO 2017, #LBA8507)。

 本多施設共同試験は、最大2レジメンまでの前治療歴(シスプラチン+ペメトレキセド併用化学療法を含む)のある進行悪性胸膜中皮腫患者125人を登録した。患者の大多数(80%)は男性で、年齢中央値は72歳だった。患者はNivolumab単剤療法群(63人)かNivolumab+Ipilimumab療法群(62人、うち実際にプロトコール治療を受けたのは61人)のいずれかに無作為割付され、病勢悪化まで継続された。70%の患者が少なくとも3コースの治療を受けた。

 今回の報告では、当初登録・治療された108人に関するものだった。過去に検証された化学療法における12週病勢コントロール割合は30%未満だったが、今回の試験における12週病勢コントロール割合はNivolumab単剤療法群で44.4%(18.5%はPR、25.9%はSD)、Nivolumab+Ipilimumab療法群の50%(25.9%はPR、24.1%はSD)だった。Intent to Treatによる最終解析では

それぞれ39.7%、51.6%だった。

 125人を平均10.4ヶ月追跡した段階で、無増悪生存期間中央値はNivolumab単剤療法群で4ヶ月、Nivolumab+Ipilimumab併用療法群で5.6ヶ月だった。生存期間中央値はそれぞれ10.4ヶ月、未到達だった。

 Nivolumab単剤療法群では、77.8%の患者でなんらかの有害事象を認めた。9人(9.5%)ではGrade 3/4の重篤な有害事象を合併した。Nivolumab+Ipilimumab併用療法群では86.9%の患者でなんらかの有害事象を認め、Grade 3/4の重篤な有害事象は11人(18.0%)にのぼった。併用療法群では3人の治療関連死が発生し、劇症肝炎1人、脳炎1人、急性腎不全1人という内訳だった。下痢(19.7% vs 6.3%、p=0.035)と皮膚掻痒症(11.5% vs 1.6%, p=0.04)はいずれも併用療法群で有意に高頻度だった。

 これまでのところ、MAPS-2試験は悪性胸膜中皮腫に対する臨床試験としては最大規模のものだが、他にもNivolumabと他の免疫チェックポイント阻害薬の併用療法を二次治療もしくは三次治療として適用する臨床試験が進行中である。加えて、初回治療として免疫チェックポイント阻害薬を用いる、より大規模な臨床試験もすでにいくつか進行中である。

Pembrolizumab in PD-L1?Positive Malignant Pleural Mesothelioma

By Matthew Stenger

Posted: 3/30/2017 9:15:08 AM

Last Updated: 3/30/2017 9:15:08 AM

 Lancet Oncology誌に掲載された第Ib相のKEYNOTE-028試験の中間解析結果によると、悪性胸膜中皮腫患者に対するPembrolizumab単剤療法により長期的な腫瘍制御効果が認められているようだ。

 KEYNOTE-028試験は既治療のPD-L1陽性(免疫染色により、腫瘍細胞の1%以上がPD-L1陽性)悪性腫瘍患者を対象に、Pembrolizumab 10mg/kgを2週間ごとに、病勢進行もしくは忍容不能の毒性で治療継続ができなくなるまで、最長2年間にわたり投与し続けるという臨床試験である。今回はその中で、悪性胸膜中皮腫の患者25人のコホートを対象として解析した。

 年齢中央値は65歳、68%は男性、84%は白人、ECOG-PSは全員が0もしくは1で、病理組織学的には上皮方が72%で、32%は2レジメン以上の前治療歴があり、88%はプラチナ製剤の前治療歴を、84%でペメトレキセドの前治療歴を含んでいた。

 奏効割合は20%(95%信頼区間は6.8%-40.7%)で、病勢コントロール割合は52%だった。奏効持続期間中央値は12.0ヶ月(95%信頼区間は3.7ヶ月−未到達)で、2016年6月のデータカットオフ時点でも2人の患者が治療継続中だった。