・ALK陽性肺がんとEnsartinib

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 ALK陽性肺がんに対する新規治療薬、Ensartinib。

 さて、アレクチニブやローラチニブよりもEnsartinibを優先的に使用する機会が、我が国であるでしょうか。

 

 

 

 

PHASE III RANDOMIZED STUDY OF ENSARTINIB VS CRIZOTINIB IN ANAPLASTIC LYMPHOMA KINASE (ALK) POSITIVE NSCLC PATIENTS: EXALT3

 

G. Selvaggi et al., 2020 WCLC presidential symposium, Abstract #2

 

背景:

 Ensartinib(X-396)は新規の第2世代ALKチロシンキナーゼ阻害薬(ALK-TKI)だ。ALK-TKI未治療、もしくはクリゾチニブやその他の第2世代ALK-TKI治療歴のある患者を対象にEnsartinibを使用した第I / II相試験の結果は有望で、脳転移巣に対しても治療効果を示した。Ensaritinibは安全性の点でも優れており、Grade 1/2相当の皮疹、掻痒症、浮腫、抗トランスアミナーゼ血症が頻度の高い有害事象だった。今回は、局所進行もしくは進行ALK陽性非小細胞肺がん患者で、ALK-TKI未治療、化学療法未治療、あるいは1レジメンまでの化学療法歴のあるものを対象に、Ensaritinibとクリゾチニブの効果と安全性を比較する第3相オープンラベルeXalt3試験の中間解析結果について報告する。

 

方法:

 ALK陽性非小細胞肺がん患者を対象に、E群(Ensartinib 250mg/日)とC群(クリゾチニブ250mg/日)に1:1の比率で無作為に割り付けた。治療群間のクロスオーバーは認めないこととした。割付調整因子は前治療での化学療法レジメン、PS、脳転移の有無、患者の居住地域とした。全患者集団をITT集団とし、Abbott FISH testを用いてALK融合遺伝子を中央判定した患者集団をmITT集団とした。主要評価項目は、独立した効果判定委員会による無増悪生存期間(PFS)とした。副次評価項目は全生存期間(OS)、奏効割合(ORR)、脳転移巣よる治療打ち切り期間(TTF for brain)とした。ITT集団における無増悪生存期間イベントが予定の75%(143/190)発生した時点で、1回だけ中間解析を行うことにしていた。

 

結果:総計290人の患者が無作為割付を受けた(E群143人、C群147人)。患者背景について、2群間に偏りはなかった。年齢中央値は54.1歳、全体の26%が化学療法治療歴あり、全体の36%が脳転移巣を合併しており、5%が脳転移巣に対する放射線治療を受けていた。mITT集団は247人で、E群121人、C群126人だった。2020年7月1日の時点でデータカットオフを行った。E群の64人(45%)、C群の25人(17%)が治療を継続していた。ITT集団では139件(73%)、mITT集団では119件(63%)のPFSイベントが発生していた。ITT集団においてE群23.8ヶ月、C群20.2ヶ月の観察期間中央値の段階で、PFS中央値はE群で25.8ヶ月、C群で12.7ヶ月で、ハザード比は0.52、95%信頼区間は0.36-0.75、p=0.0003だった。mITT集団におけるPFS中央値は、E群は未到達、C群は12.7ヶ月で、ハザード比0.48、95%信頼区間は0.32-0.71、p=0.0002だった。mITT集団におけるORRは、E群で75%(91/121)、C群で67%(85/126)だった。脳に測定可能病変を有する患者集団では、頭蓋内病変奏効割合はE群で54%(7/13)、C群で19%(4/21)だった。治療開始前の段階で脳転移巣のなかった患者における、脳転移による治療打ち切り割合は、12ヶ月経過時点でE群4%、C群24%とE群で優れていた(ハザード比0.33、p=0.0016)。mITT集団において、生存期間中央値は両群ともに未到達だった(ハザード比0.91)。24ヶ月生存割合は両群ともに78%だった。安全性についての新規知見はなかった。

 

結論:

 ALK陽性非小細胞肺がん患者において、Ensaritinibはクリゾチニブに対して有意に無増悪生存期間を延長し、安全性プロファイルについてもまずまずで、この患者集団に対する新たな初回治療選択肢と考えてよい。