・改めてCROWN試験

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 プレスリリースの時点で一度取り上げた、ロルラチニブ vs クリゾチニブのガチンコ試験、CROWN試験。

 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e979184.html

 ESMO 2020で結果が公表されました。

 発表者は、ALK陽性肺がんに対するクリゾチニブ一次治療の有効性について、PROFILE1014試験で発表したSolomon先生です。

 https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa1408440

 2007年のALK融合遺伝子の報告、2014年のPROFILE1014の報告、そしてALEX試験、J-ALEX試験、CROWN試験と、クリゾチニブの栄枯盛衰を感じます。

 

 

 

Lorlatinib vs crizotinib in the first-line treatment of patients (pts) with advanced ALK-positive non-small cell lung cancer (NSCLC): Results of the phase III CROWN study

 

Benjamin Solomon et al., ESMO 2020 Abst.#LBA2

 

背景:

 ロルラチニブは第3世代のALKチロシンキナーゼ阻害薬であり、ALK融合遺伝子陽性の進行非小細胞肺癌に対し、中枢神経病変を含めて全般的な有効性が証明されている。今回は、未治療のALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者の一次治療において、ロルラチニブとクリゾチニブを比較するオープンラベル、ランダム化、多施設共同の第III相比較試験の中間解析結果について報告する。

 

方法:

 23か国、104参加施設から、ALK融合遺伝子陽性の未治療、IIIB / IV期の非小細胞肺がん患者を集積し、1:1の割合でロルラチニブ群とクリゾチニブ群に割り付けた。割り付け調整因子は中枢神経病変の有無、人種とした。主要評価項目は独立した中央判定による無増悪生存期間とした。副次評価項目は担当医評価による無増悪生存期間、奏効割合、中央判定による中枢神経病変の奏効割合、奏効持続期間、中枢神経病変の奏効持続期間、全生存期間、安全性とした。今回の中間解析は、無増悪生存イベントの72%が発生したと考えられる時点で予定されていた中間解析結果に基づくものである

 

結果:

 296人の患者が無作為割り付けされ、291人がプロトコール治療を受けた。2020年3月20日のデータカットオフの時点で、中央判定による無増悪生存データについての追跡期間中央値はロルラチニブ群(149人)では18.3ヶ月(95%信頼区間は16.4-20.1ヶ月)、クリゾチニブ群(147人)では14.8ヶ月(95%信頼区間は12.8-18.4ヶ月)だった。中央判定による無増悪生存期間は、ロルラチニブにより有意に改善していた(ハザード比0.28、95%信頼区間は0.191-0.413、片側検定でp<0.001)。ロルラチニブの無増悪生存期間中央値は未到達(95%信頼区間も上限・下限ともに未到達)で、クリゾチニブの無増悪生存期間は9.3ヶ月(95%信頼区間は7.6-11.1ヶ月)だった。担当医評価による無増悪生存期間、奏効割合、中央判定による中枢神経病変の奏効割合もtableのごとくロルラチニブにより改善していた。Grade 3-4の有害事象はロルラチニブ群の72.5%、クリゾチニブ群の55.6%で、治療中断に至る有害事象はロルラチニブ群の6.7%で、クリゾチニブ群の9.2%で認めた。ロルラチニブ群におけるGrade 3-4の有害事象の大多数は臨床検査値の異常であり、そのほとんどは脂質異常に関するものだった。

 

結論:

 クリゾチニブと比較して、ロルラチニブは統計学的有意に、そして臨床的に意義のある無増悪生存期間の延長を達成した。ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌に対する初回治療として、ロルラチニブは考慮すべき治療オプションである。

 

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