オシメルチニブ+ABBV-399

 EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がんの患者さんで、オシメルチニブに耐性化した後、どうするか。

 普通に考えれば化学療法への移行というところだろう。

 臨床試験では、オシメルチニブ+αの治療がいろいろと試されている。

 オシメルチニブと、c-MET抗体−抗腫瘍薬複合体のTeliso-V(ABBV-399)の併用に関する臨床試験が国内でも進行中とのこと。

 Teliso-V単剤療法に関する第I相臨床試験の報告があったので、要約に目を通してみた。

 果たして、オシメルチニブとの併用で相乗効果が得られるのかどうか。

First-in-Human Phase I, Dose-Escalation and -Expansion Study of Telisotuzumab Vedotin, an Antibody-Drug Conjugate Targeting c-Met, in Patients With Advanced Solid Tumors

John H Strickler, et al, J Clin Oncol 2018

目的:

 今回の第I相臨床試験(first-in human study, 試験薬を世界で初めてヒトに投与する試験)では、抗c-Metモノクローナル抗体ABT-700と抗腫瘍薬monomethyl auristatin Eの複合体であるtelisotuzumab vedotin(Teliso-V、以前はABBV-399と呼ばれていた)について評価した。

方法:

 用量漸増相では、3-6人の進行固形癌の患者を8つのコホートに振り分けた(Teliso-Vを0.15mg/kg投与するコホートから、3.3mg/kg投与するコホートまで)。続いて、用量拡大相では、c-Metを過剰発現している(免疫染色で細胞膜が染色されるH-scoreが150以上であるもの)非小細胞肺がん患者を組み入れた。対象患者は、Teliso-V単剤療法を3週間ごとに受けた。安全性、忍容性、薬物動態、最大耐用量を決定した。

結果:

 48人の患者が登録された(年齢中央値は65歳、全体の35.4%が非小細胞肺がん患者、前治療レジメン数の中央値は4レジメン)。3.0mg/kgコホート(9人)、3.3mg/kgコホート(3人)において、それぞれ1人ずつが用量制限毒性を来した。最大耐用量の同定には至らなかったが、全体の安全性と忍容性のデータから、第II相試験での推奨用量は2.7mg/kgとした。治療関連毒性で頻度が高かったものは、疲労(42%)、嘔気(27%)、便秘(27%)、食欲不振(23%)、嘔吐(21%)、呼吸困難(21%)、下痢(19%)、末梢浮腫(19%)、末梢神経障害(17%)だった。Grade 3以上の毒性で頻度が高かったものは、疲労、貧血、好中球減少症、低アルブミン血症で、いずれも4%ずつの発現率だった。Teliso-Vと抗体量の血中濃度は、概ね投与量に比例しており、平均半減期は2-4日間だった。前向きスクリーニングを行ったところ、58人の非小細胞肺がん患者中で35人(60%)がc-Met陽性だった。c-Met陽性の非小細胞肺がん患者で、Teliso-Vの投与量が2.4-3.0mg/kgだった患者を対象に調べたところ、3人(18.8%、95%信頼区間は3.1-45.7%)で部分奏効を認め(奏効持続期間中央値は4.8ヶ月)、無増悪生存期間中央値は5.7ヶ月(95%信頼区間は1.2-15.4ヶ月)だった。その他の患者では、腫瘍縮小効果は得られなかった。

結論:

 Teliso-V単剤療法は良好な安全性・忍容性プロファイルを示し、c-MET陽性の非小細胞肺がん患者において有望な抗腫瘍活性を示した。