2020-01-01から1年間の記事一覧

・ADAURA試験

ADAURA試験については、以前取り上げたことがあります。 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e973395.html 無病生存期間の生存曲線を見て、目を瞠りました。 ハザード比0.17・・・。 そうそうお目にかかれない数字です。 本試験は、術後補助化学療法…

Foundation One CDxのレポートに見るROS1融合遺伝子陽性肺がんの概略

Foundation One CDxを発注し、ROS1融合遺伝子が検出されたが、そこに記された概略がとてもよくまとめられている。 勉強になったので、書き残す。 <ROS1融合遺伝子> ROS1がん遺伝子は、いくつかのシグナル伝達系(ERK1/2, PI3K, AKT, STAT3, VAV3)を活性化…

血液検査と骨髄抑制管理の外部委託

本日の就業前30分ごろ、病院の事務局長から呼び出しを受けた。 何の相談だろうと思ったら、近くの総合病院からアンケート回答依頼が来ているので、相談に乗ってほしいとのことだった。 最近、この総合病院に血液内科が新設された。 血液内科の医師が2人、常…

国産PCA(patient controlled analgesia)ポンプ...i-Fusor plus

最近入院していたがん患者さんの疼痛管理がなかなか大変で、一晩中、ほぼ20分に1回の頻度で注射用麻薬のレスキュー投与を必要としていた。 当然、患者さん本人だけでなく、夜勤の看護スタッフはずっと気が休まらない。 私の疼痛コントロールの拙さからく…

・「進行性線維化を伴う間質性肺疾患」へ、ニンテダニブが使用可能に

肺がん診療と直接の関係はありませんが、「進行性線維化」を伴う幅広い間質性肺疾患に対して、ニンテダニブが保険適用されることになりました。 ニンテダニブもピルフェニドンも、対象疾患がほぼ特発性肺線維症に限定されていたため、これは大きな進歩です。…

先祖を想い、家族をつなぐ

何度でも繰り返すが、新型コロナウイルスは家族の絆を分断した。 進行がんで患者が苦しんでいて、遠く離れた家族と今こそ互いに会うべきときなのに、自粛という壁が立ちはだかる。 健康なときに家族を大切にしないと、いざというときに後悔することになる。 …

・METエクソン14スキップ変異とテポチニブ・・・第II相VISION試験

METエクソン14スキップ変異に対するテポチニブの有効性を検証したVISION試験の論文です。 New England Journal of Medicineに掲載されています。 Tepotinib in Non–Small-Cell Lung Cancer with MET Exon 14 Skipping Mutations | NEJM Paul K. Paik, M.D. e…

「ふれあい」はAIでもオンラインでも代替不能

新型コロナウイルス騒ぎは、様々な発見を我々に与えている。 ・これだけ科学が発達しても、たった1種類の目に見えない無生物に、全世界が翻弄されてしまうこと ・交通インフラ、ネット社会が発達し、政治・文化・経済の世界的な結びつきが深まったため、ウイ…

NEJ-026試験の全生存期間解析・・・やっぱりそうですよね。

NEJ-026試験のことは以前に触れた。 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e944390.html 全生存期間の解析結果が今回示されたわけだが・・・やっぱりそうですよね。 統計学的有意差はつかなかった。 ベバシズマブ上乗せは、無増悪生存期間は延長するが…

小細胞肺がんにはやっぱりPD-L1阻害薬?・・・CASPIAN試験のupdated data

CASPIAN試験のことは(ちょっと手抜きだけど)以前触れた。 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e968112.html 今回のASCO 2020 virtual presentationでは、そのupdated dataが示されるらしい。 進展型小細胞肺がんに対して、プラチナ製剤+エトポシ…

KEYNOTE-604試験・・・統計学的にはほぼ優位だが、臨床的メリットがあると言えるのか

プレスリリースの時点で一度記事にした。 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e969016.html 統計学的にはほぼ有効性が確認されたとしていいのだろうが。 ペンブロリズマブを上乗せすることで得られる無増悪生存期間の延長が0.2ヶ月(6日間)、全生存…

ゲフィチニブの術後補助化学療法は全生存期間を延長しないが・・・ADJUVANT-CTONG1104

ADJUVANT-CTONG1104は、過去に何度か扱った。 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e919586.html 今回は、全生存期間に関する最終解析結果。 こうした試験デザインで、全生存期間が延長しないという現象は、もはや当たり前になってしまった。 しかし…

JCOG1205/1206・・・斜陽のイリノテカン

初期のパイロットスタディー立案に関わった立場としては寂しい限りだ。 小細胞肺がん、大細胞神経内分泌がんの術後補助化学療法として、シスプラチン+イリノテカン併用療法の有効性を検証した本試験。 残念ながら、シスプラチン+エトポシド併用療法に対す…

新型コロナウイルスの陰に潜む、オリンピックイヤーのマイコプラズマ

我々はいま、医療人としての職業倫理を問われている。 新型コロナウイルス感染症が世界を席巻する中、多分医療人は3種類に区分されている。 新型コロナウイルス感染の可能性が少しでもあれば、診療を拒否するグループ。 新型コロナウイルス感染者を、積極的…

・抗TIGIT抗体、Tiragolumabの第III相試験 肺がんの一次治療で

日経メディカルの記事を眺めていて気がつきました。 中外製薬の新薬開発状況についてまとめられた中に、抗TIGITヒトモノクローナル抗体、Tiragolumabの臨床試験について触れられていました。 https://www.chugai-pharm.co.jp/ir/reports_downloads/pipeline.…

CoVID-19を合併した胸部悪性腫瘍患者に関する国際調査

CoVID-19を合併した胸部悪性腫瘍(ほぼ肺がんと同義と考えてよい)についての報告。 PCRで診断確定した患者のみならず、CoVID-19患者と濃厚接触した胸部悪性腫瘍患者も、更にはCoVID-19を思わせる臨床症状を呈している胸部悪性腫瘍患者までもが対象として組…

プラチナ併用化学療法後、次治療としてのペンブロリズマブ+ドセタキセル併用療法(EGFR遺伝子変異陽性者を含む)

免疫チェックポイント阻害薬がほぼ一次治療で使われるようになった今になって、二次治療での話かよ、と高を括っていた。 EGFR遺伝子変異陽性の患者からの相談に答えていて、ふと思いなおした。 EGFR遺伝子変異陽性で、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬による治療…

・免疫チェックポイント阻害薬による術前免疫療法

ときどき思い立って、データベースを使って肺がん患者さんの過去を遡り、気づきを探すことにしています。 5年間以上の長期生存を達成した患者さんの臨床経過はとくに参考になります。 こうした作業は、学会発表で経過をまとめる医師がときどき行う程度で、実…

・終末期ケアとCoVID-19緊急事態宣言のせめぎあい

がんの種類を問わず、社会復帰を目指したリハビリテーションを希望する患者さん、あるいは住み慣れた地域での終末期医療を希望する患者さんは、できるだけ受け入れるように努力しています。 今日は、婦人科がんの患者さん受け入れについて、県外の医療機関か…

・TepotinibがMET exon 14 skipping mutation陽性の非小細胞肺がんに対する承認を取得

METエクソン14スキップ変異。 この遺伝子医変異を持つ患者さんに対しては、クリゾチニブが最初に承認されると思っていましたが、Tepotinibが先陣を切りました。 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e968768.html https://kyodonewsprwire.jp/release…

術後補助化学療法にもオシメルチニブ・・・ADAURA試験、「顕著な有効性」を示す

EGFR遺伝子変異陽性の肺がん患者に対する術後補助化学療法、この分野ではLast Frontierといっていいだろう。 何度か記事として取り扱っている。 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e833715.html http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e900761…

リキッドバイオプシーの回数制限緩和

2年ごとの診療報酬改定、個人レベルで細部を確認するのは難しい。 日経メディカルの記事を読んでいたら、こんな内容が記されていた。 引用する。 <リキッドバイオプシーを用いた肺癌のEGFR遺伝子検査が3回まで可能に> 2020/03/30 ・2020年度の診療報酬改定…

気管支鏡検査制限

いよいよ気管支鏡検査を制限しようという議論が真実味を持って語られ始めた。 すでに、急を要しない気管支鏡検査はできるだけ行わない、あるいは先延ばしにする流れになっている。 これだけ感染経路不明の患者が増えると、気管支鏡の対象となる患者がたまた…

・EGFR遺伝子変異陽性、中枢神経系や髄膜癌腫症合併患者のためのオシメルチニブ

随分長い題名になってしまいました。 他のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬と比較して、オシメルチニブが中枢神経系の病変に対して効果が高いのはよく知られているところです。 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e882512.html http://oitahaiganpractic…

脳転移、髄膜癌腫症とペンブロリズマブ

様々ある肺がんの合併症の中でも、厄介極まりないものに髄膜癌腫症(がん性髄膜炎)がある。 何度煮え湯を飲まされたことか。 髄膜癌腫症を発症すると、進行性の神経症状のために一気にPSが低下し、がん薬物療法の継続が困難となってしまう。 脳転移ならば、…

・小細胞肺がん二次治療としてのアムルビシン単剤療法の効果

ひとつ前の記事で、Lubrinectedinのことを書いていて、そういえば小細胞肺がん二次治療におけるアムルビシンのことをまとめていなかったなと気が付きました。 肺がん診療ガイドラインを眺めて、我が国のアムルビシン療法の背景になっている論文の要約をまと…

小細胞肺癌二次治療におけるLurbinectedin

ASCO 2019で報告されていたLurbinectedinの第2相試験、論文化されていた。 今回は単剤としての治療効果の報告だが、何故か現在進行中の第3相試験は、ドキソルビシンとの併用療法としての効果を検証するものらしい。 ドキソルビシンにこだわるところが、いか…

「病院はホテルじゃない」から、「ホテルは病院じゃない」へ

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、7都府県に限定された形ではあるが、近々に緊急事態宣言が発出される見通しとなった。 2020/04/07に発出、2020/04/08に発効する見通しとのこと。 これを受けて、直ちに小池都知事は、発効後に緊急事態措置を開始すると…

新型コロナウイルス感染症対策として、サージカルマスクは有効なのか?

2020/04/04の記事では、非感染性(論文では、塩化ナトリウムを含む微粒子と記載されていた)の人工微粒子をどの程度マスクが遮断できるかということで、ガーゼマスクは97%、医療用マスク(サージカルマスク)でさえも44%の人工微粒子を透過させてしまうと記…

新型コロナウイルス感染症対策として、ガーゼマスクは有効なのか?

最近突如として始まった、各大臣のマスク着用が話題になっている。 中でも、安倍首相が率先して使用しているガーゼマスクは、一部で失笑を買っている。 アベノミクスにあやかって、アベノマスクという用語まで出てきているようだ。 以下の論文を見る限り、吸…