ゲフィチニブの術後補助化学療法は全生存期間を延長しないが・・・ADJUVANT-CTONG1104

 ADJUVANT-CTONG1104は、過去に何度か扱った。

http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e919586.html

 今回は、全生存期間に関する最終解析結果。

 こうした試験デザインで、全生存期間が延長しないという現象は、もはや当たり前になってしまった。

 しかし、わずか15人のサブグループ解析の結果ではあるが、術後補助治療でゲフィチニブを使って、再発後にも何らかのEGFRチロシンキナーゼ阻害薬を使うと、病理病期II-IIIA期の患者の術後全生存期間中央値が6年を超える、というのは、やはり意義のある結果ではないだろうか。

 日常臨床の経験から、そう実感する。

 

CTONG1104: Adjuvant gefitinib versus chemotherapy for resected N1-N2 NSCLC with EGFR mutation?Final overall survival analysis of the randomized phase III trial 1 analysis of the randomized phase III trial.

Yi-Long Wu,et al.

2020 ASCO Virtual Scientific Program

abst.#9005

背景:

 ADJUVANT-CTONG1104試験は、EGFR遺伝子変異陽性、病理病期II-IIIA(N1-N2)期の完全切除後非小細胞肺がん患者における術後補助療法として、標準的な併用化学療法に対するゲフィチニブ内服療法が無病生存期間を有意に改善することを示した。N1-N2患者における5年生存割合は、IASLC病期診断システムでは38-50%とされている。今回、本試験における全生存期間の最終解析結果を報告する。

方法:

 2011年9月から2014年4月の期間に、222人の患者を集積した。年齢は18歳から75歳、27施設から適格患者を集積した。患者を1:1の比率で各治療群間に割り付けた。G群(111人)ではゲフィチニブ250mg/日を24ヶ月にわたって投与した。VP群(111人)では、ビノレルビン(25?/?、1日目、8日目)+シスプラチン(75mg/?、1日目)併用療法を3週間ごとに4コース投与した。主要評価項目は無病生存期間、ITT解析に基づくものとした。副次評価項目には全生存期間、3年無病生存割合、5年無病生存割合、5年生存割合を含めた。VP群がゲフィチニブを使用する、G群がゲフィチニブを再使用するなど、再発後の後治療についてもデータを収集した。今回の解析におけるデータカットオフは2020年1月13日とした。

結果:

 追跡期間中央値は76.9ヶ月だった。ITT解析対象となった患者集団全体における再発/死亡イベントは95件(42.8%)だった。生存期間中央値はG群で75.5ヶ月、VP群で79.2ヶ月、ハザード比は0.96、95%信頼区間は0.64-1.43、p=0.823だった。3年生存割合、5年生存割合は、G群でそれぞれ68.6%、53.8%で、VP群では67.5%、52.4%だった。3年無病生存割合、5年無病生存割合は、G群で40.3%、23.4%で、VP群では33.2%、23.7%だった(3年無病生存割合に関するp値は0.395、5年無病生存割合におけるp値は0.891)。年齢、性別、リンパ節転移の状況、EGFR遺伝子変異タイプ別のサブグループ解析では、有意差がつくものはなかった。後治療においては、分子標的薬を用いた治療が生存期間延長に寄与していた(ハザード比0.46、95%信頼区間は0.26-0.83)。後治療で分子標的薬を使用した患者(35人)の生存期間中央値は75.5ヶ月で、その他の治療を受けた患者(33人)の生存期間中央値は36.4ヶ月だった(p<0.001)。G群で後治療に分子標的薬を使用した患者(15人)の生存期間中央値は75.5ヶ月で、その他の治療を受けた患者(18人)の生存期間中央値は36.4ヶ月だった(p<0.001)。VP群で後治療に分子標的薬を使用した患者(20人)の生存期間中央値は62.8ヶ月で、その他の治療を受けた患者(15人)の生存期間中央値は46.8ヶ月だった(p=0.251)。G群で後治療に分子標的薬を使用した患者(15人)における奏効割合は26.7%、病勢コントロール割合は66.7%、無増悪生存期間中央値は14.1ヶ月、全生存期間中央値は19.6ヶ月だった。追跡期間中に、想定外の重篤な有害事象は認められなかった。

結論:

 ADJUVANT試験では、無病生存期間の延長がそのまま全生存期間の延長に反映されることはなかった(無病生存期間は延長したが、全生存期間は延長しなかった)。N1-N2期の完全切除後非小細胞肺がん患者の生存期間中央値が75.5ヶ月に及ぶというのは過去のデータと比較して有望であり、術後補助化学療法、再発後治療のいずれでも分子標的薬を使用することで生存期間延長が期待できる。

・CTONG1104試験概要

・全生存期間の生存曲線

・無病生存期間の生存曲線