KEYNOTE-604試験・・・統計学的にはほぼ優位だが、臨床的メリットがあると言えるのか

 プレスリリースの時点で一度記事にした。

 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e969016.html

 統計学的にはほぼ有効性が確認されたとしていいのだろうが。

 ペンブロリズマブを上乗せすることで得られる無増悪生存期間の延長が0.2ヶ月(6日間)、全生存期間の延長が1.1ヶ月(33日間)。

 果たしてコストに見合うと言えるのか。

 私は見合わないと思う。

KEYNOTE-604: Pembrolizumab (pembro) or placebo plus etoposide and platinum (EP) as first-line therapy for extensive-stage (ES) small-cell lung cancer (SCLC).

Charles M. Rudin. et al.

2020 ASCO Virtual Scientific Program

abst.#9001

背景:

 ペンブロリズマブ単剤療法は進展型小細胞肺がん薬物療法における3次治療以降で持続的な抗腫瘍活性を示し、米国食品医薬品局の薬事承認につながった。KEYNOTE-604試験は、進展型小細胞がんの初回治療として、ペンブロリズマブ+エトポシド+プラチナ製剤併用療法とプラセボエトポシド+プラチナ製剤併用療法の効果を比較する第III相臨床試験である。

方法:

 未治療の進展型小細胞肺がん患者(中枢神経転移はないか、あっても治療済み)を対象に、プラチナ製剤+エトポシド併用療法(EP療法)4コースに加えて、ペンブロリズマブ200mg/回(P群)もしくは生理食塩水(S群)を3週間に1度、最長35コースにわたって投与することにした。4コースの治療の後、完全奏効もしくは部分奏効に達した患者では、担当医の判断で予防的全脳照射を適用できることとした。割付調整因子は、使用するプラチナ製剤(カルボプラチン vs シスプラチン)、ECOG-PS(0 vs 1)、LDH値(正常上限以下 vs 正常上限を超える)とした。主要評価項目は、ITT解析における全生存期間、無増悪生存期間の双方とした。副次評価項目は奏効割合、奏効持続期間、安全性とした。2回の中間解析と最終解析をプロトコールで規定した。2回目の中間解析時点での無増悪生存期間の有意水準を片側0.0048とし、最終解析における全生存期間の有意水準を0.0128とした。

結果:

 453人の患者が無作為割付の対象となった。P群には228人が、S群には235人が割り付けられた。P群に割り付けられた患者のうち1人だけ、誤ってS群の治療を受けた。年齢中央値は65歳、全体の74%がPS1で、全体の57%のLDH値が正常上限を超えていた。P群の方が、治療開始前に脳転移を有する患者が多かった(14% vs 10%)。追跡期間中央値21.6ヶ月の最終解析時点で、P群のうち9%、S群のうち1%がプロトコール治療を継続していた。P群の12%、S群の14%が予防的全脳照射を受けた。2回目の中間解析時点(追跡期間中央値は13.5ヶ月)で、P群は有意に無増悪生存期間を延長した(無増悪生存期間中央値はP群4.5ヶ月 vs S群4.3ヶ月、ハザード比0.75、95%信頼区間0.61-0.91、p=0.0023)。しかし、最終解析時点で、P群は生存期間を延長したものの、有意水準を満たすことはできなかった(生存期間中央値はP群10.8ヶ月、S群9.7ヶ月、ハザード比0.80、95%信頼区間0.64-0.98、p=0.0164)。ITT解析ではなく、実治療群間での後付け解析を行ってみると、全生存期間解析でも有意水準を満たした(ハザード比0.78、95%信頼区間0.63-0.97、p=0.0124)。最終解析時点での奏効割合はP群で71%、S群で62%だった。奏効持続期間中央値はP群で4.2ヶ月、S群で3.7ヶ月だった。有害事象は事前に想定された範囲内であり、Grade 3/4の有害事象割合はP群77%、S群75%、Grade 5の有害事象割合はP群6%、S群5%、治療中止割合はP群15%、S群6%だった。

結論:

 プラチナ製剤+エトポシド+ペンブロリズマブ併用療法は、プラチナ製剤+エトポシド併用療法と比較して有意に無増悪生存期間を改善し、全生存期間も延長する傾向が見られた。想定外の有害事象は確認できなかった。今回のデータから、進展型小細胞がんにおけるペンブロリズマブを含む治療法の有用性が示唆された。