・METエクソン14スキップ変異とテポチニブ・・・第II相VISION試験

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 METエクソン14スキップ変異に対するテポチニブの有効性を検証したVISION試験の論文です。

 New England Journal of Medicineに掲載されています。

 

Tepotinib in Non–Small-Cell Lung Cancer with MET Exon 14 Skipping Mutations | NEJM

 

Paul K. Paik, M.D. et al., N Engl J Med 2020

May 29, 2020, DOI: 10.1056/NEJMoa2004407

 

背景:

 転写RNAスプライシング部位の異常に起因し、正常な翻訳(蛋白質合成)ができなくなるMETエクソン14スキップ変異は、非小細胞肺がん患者の3-4%に認められる。本患者群に対して、METに高い選択性を有する分子標的薬であるテポチニブの効果と安全性を評価した。

 

方法:

 今回のオープンラベル、第II相試験において、METエクソン14スキップ変異を有する進行非小細胞肺がん患者を対象に、テポチニブ500mg/日を1日1回、参加者に内服してもらった。主要評価項目は、独立評価委員会により評価された奏効割合で、少なくとも9ヶ月以上追跡調査されている患者のみを対象とした。奏効割合は、METエクソン14スキップ変異がリキッド・バイオプシーで検出されたか、あるいは組織生検標本で検出されたかによって層別解析した。

 

結果:

 2020年1月1日までに、総計152人の患者がテポチニブを使用して。99人が少なくとも9ヶ月以上の追跡調査を受けた。全体の奏効割合は46%(95%信頼区間は36-57%)で、奏効持続期間中央値は11.1ヶ月(95%信頼区間は7.2ヶ月以上)だった。リキッド・バイオプシーでMETエクソン14スキップ変異が確認された患者群66人では、奏効割合は48%(95%信頼区間は36−61%)で、組織診断で確認された患者群60人では、奏効割合は50%(95%信頼区間は37-63%)だった。27人の患者は、両方の検査でMETエクソン14スキップ変異が確認されていた。担当医評価による奏効割合は56%(95%信頼区間は45-66%)で、前治療の内容にかかわらず同様の結果だった。

 テポチニブに関連すると思われるGrade 3以上の有害事象は全体の28%で認められ、末梢性浮腫も7%で認められた。テポチニブの投与中止を余儀なくされる有害事象は、全体の11%で認めた。治療開始前と治療中にリキッド・バイオプシーサンプルを採取した患者では、循環腫瘍DNAに改善が見られた患者は全体の67%だった。

 

結論:

 METエクソン14スキップ変異を有する進行非小細胞肺がん患者では、テポチニブによる治療は約半数の患者に対して部分奏効をもたらした。Grade 3以上の有害事象としては、末梢性浮腫が主たるものだった。