・METエクソン14スキップ変異に対するカプマチニブの効果

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 我が国のMETエクソン14スキップ変異陽性非小細胞肺がん患者さんに対する治療薬として保険承認されているカプマチニブ。

 過去に学会報告として取り扱ったことがありますが、改めて論文を取り上げておきます。

 METエクソン14スキップ変異陽性であっても、他の薬剤による治療歴があるとやや効果が落ちるようです。

 

Capmatinib in MET Exon 14–Mutated or MET-Amplified Non–Small-Cell Lung Cancer | NEJM

 

Jürgen Wolf et al.
N Engl J Med 2020; 383:944-957
DOI: 10.1056/NEJMoa2002787

 

背景:
 非小細胞肺がん患者のうち、METエクソン14スキップ変異を有する患者は3-4%を、MET遺伝子増幅を示す患者は1-6%を占める。カプマチニブは選択的MET受容体阻害薬であり、各種のMET活性化を示すがんの動物モデルで有効性が確認されている。

 

方法:
 MET異常をきたした進行非小細胞肺がん患者を対象に、カプマチニブの有効性と安全性を評価するマルチコホート第II相試験を企画した。過去の治療歴とMET異常の種類(METエクソン14スキップ変異もしくはMET遺伝子増幅)に応じて患者を各コホートに振り分けた。患者はカプマチニブ錠400mgを1日2回服用した。主要評価項目は奏効割合、副次評価項目は奏効持続期間とした。独立効果判定委員会が有効性を評価した。

 

結果:
 総計364人の患者が各コホートに割り付けられた。過去に1レジメンもしくは2レジメンの薬物療法歴があり、METエクソン14スキップ変異を有する非小細胞肺がん患者のコホート(計69人)では、奏効割合は41%(95%信頼区間29-53)、奏効持続期間中央値は9.7ヶ月(95%信頼区間5.6-13.0)、未治療のMETエクソン14スキップ変異を有する非小細胞肺がん患者のコホート(計28人)では、奏効割合は68%(95%信頼区間48-84)、奏効持続期間中央値は12.6ヶ月(95%信頼区間5.6-未到達)だった。治療歴があり、MET遺伝子コピー数増幅が10未満の患者コホートでは奏効割合は7-12%と有効性が限られていた。一方、MET遺伝子コピー数増幅が10以上の患者コホートでは、過去に薬物療法歴のある患者コホートでの奏効割合は29%(95%信頼区間19-41)で、未治療の患者コホートでは40%(95%信頼区間16-68)だった。頻度の高い有害事象は末梢浮腫(51%)と嘔気(45%)で、これら有害事象のほとんどはGrade 1もしくは2と軽微だった。

 

結論:
 カプマチニブはMETエクソン14スキップ変異を有する非小細胞肺がん患者において、とりわけ治療歴のない患者集団で本質的な抗腫瘍活性を示した。一方、MET遺伝子増幅を示す患者集団では、MET遺伝子コピー数増幅が多い患者の方がカプマチニブの有効性が高かった。末梢浮腫と嘔気が主な有害事象だった。

 

 

 関連記事です。

 

 METエクソン14スキップ変異に対するもうひとつの薬、テポチニブに関する論文報告です。

oitahaiganpractice.hatenablog.com

 

 カプマチニブとテポチニブに関するまとまった報告が成されたのは、2019年の米国臨床腫瘍学会総会でした。

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