・Co-MET試験

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 肺がん領域でMETエクソン14スキップ変異が見いだされた当初、クリゾチニブが治療薬として有望視されていました。

 しかし、クリゾチニブは複数の分子標的に有効な、裏を返せば個々の分子標的に対する治療効果がやや弱く、副作用は強く出やすいきらいがあり、実地臨床への応用という点ではテポチニブやカプマチニブといった選択的MET阻害薬の後塵を拝することになっています。

 今回紹介するのは、METエクソン14スキップ変異陽性日本人患者さんを対象にクリゾチニブの有効性と安全性を検証したCo-MET試験の結果です。

 こうして治療効果を比較してみると、やはりクリゾチニブの効果は他の二剤と比較して若干劣るようで、ALK融合遺伝子の治療体系で見られた現象によく似ています。

 むしろ、テポチニブやカプマチニブ治療後の耐性化局面で、クリゾチニブの真価が発揮されるのかもしれません。

 

 

 

 

Phase 2 trial of crizotinib in Japanese patients with advanced NSCLC harboring a MET gene alteration: Co-MET study

 

Toyozawa et al., JSMO2022, Abst.#O13-5

 

背景:
 非小細胞肺がん患者の3-4%でMETエクソン14スキップ変異を、1%未満でMET遺伝子増幅を認める。クリゾチニブは選択的ATP競合性c-MET、ALK、ROS1チロシンキナーゼ阻害小分子化合物であり、MET活性化腫瘍の動物モデルにおいて抗腫瘍活性が示されている。

 

方法:
 Co-MET試験はMET阻害薬治療歴のないMET遺伝子異常陽性進行非小細胞肺がん患者を対象にクリゾチニブの安全性と有効性を評価する第II相単アーム臨床試験である。コホート1としてMETエクソン14スキップ変異を有する患者、コホート2としてMET遺伝子増幅(gene copy number>7)を有する患者を設定した。プロトコール治療は、クリゾチニブ250mgを1日2回投与し、病勢進行もしくは忍容不能の毒性出現まで継続することとした。主要評価項目は独立効果判定委員会によりRECIST ver.1.1準拠で評価した奏効割合(ORR)とした。副次評価項目として奏功持続期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性を設定した。コホート1に対してはαエラー0.05の片側検定を行ったが、コホート2では探索的研究の位置づけとして統計学的解析を予定しなかった。

 

結果:
 2018年3月から2020年2月までに28人(コホート1に23人、コホート2に5人)の患者を組み入れた。コホート1で効果判定対象となった21人におけるORRは38.1%(90%信頼区間20.6-58.3、95%信頼区間18.1-61.6)で、90%信頼区間の下限が事前設定していた閾値奏効割合20%を上回り有意水準を満たした(p=0.0382)ため、主要評価項目は達成したと判断した。一方、コホート2における奏効割合は40.0%(90%信頼区間18.9-92.4、95%信頼区間14.7-94.7)だった。コホート1における奏効持続期間中央値は227.0日(95%信頼区間57-未到達)、無増悪生存期間中央値は111.5日(95%信頼区間63-281)、全生存期間中央値は273.0日(95%信頼区間120-596)だった。過去に報告されていない有害事象は発生せず、頻度の高い(発生頻度>30%)有害事象は食欲不振(64.3%)、便秘・下痢・ALT増加・AST増加(それぞれ53.6%)、末梢性浮腫(42.9%)、嘔気・嘔吐(それぞれ39.3%)、洞性徐脈(32.1%)だった。治療に関連したGrade 5の有害事象(=死亡)は認めなかった。

 

結論:
 METエクソン14スキップ変異陽性非小細胞肺がん患者に対し、クリゾチニブはテポチニブやカプマチニブと同様の臨床的有効性を示した。

 

 

 

 

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