・RET肺がんとSelpercatinib

 ROS1肺がん同様、発現頻度は決して高くはないRET肺がん。 

 新規治療が開発されたとしても、肺がん診療全体に及ぼすインパクトは大きくありません。

 そのため、話題に取り上げるのを避けてきましたが、今日は取り上げます。

 

 SelpercatnibはRET融合遺伝子もしくはRET遺伝子変異を有する非小細胞肺がんと甲状腺がんに対し、2020/05/08付で米国食品医薬品局により承認されました。

 LIBRETTO-001試験の結果に基づく承認です。

 非小細胞肺がんのわずか1-2%(実感としてはもっと少ないように感じます)のみのRET融合遺伝子陽性肺がんを以下に粘り強く探し続けるかが、医療従事者にとっての最初の試練でしょう。

 

 

 

 

Efficacy of Selpercatinib in RET Fusion-Positive Non-Small-Cell Lung Cancer

Drilon et al., N Engl J Med. 2020 Aug 27;383(9):813-824.

DOI: 10.1056/NEJMoa2005653

 

背景:

 RET融合遺伝子は、非小細胞肺がんの1-2%に認めるとされるドライバー遺伝子変異である。RET融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんにおいて、選択的RET阻害薬の有効性と安全性はわかっていない。

 

方法:

 過去にプラチナ併用化学療法を受けたことがある、あるいは過去に治療歴のないRET融合遺伝子陽性の進行非小細胞肺がん患者を対象に、別々にselpercatinibの第1-2相臨床試験に組み入れた。主要評価項目は独立効果判定員会により判定された奏効割合とした。副次評価項目は奏効持続期間、無増悪生存期間、安全性とした。

 

結果: 

 プラチナ併用化学療法を受けたことのあるRET融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん患者集団の最初の105人において、奏効割合は64%(95%信頼区間は54-73%)だった。奏効持続期間中央値は17.5ヶ月(95%信頼区間は12.0ヶ月-未到達)で、経過観察期間中央値12.1ヶ月時点では、63%の患者で縮小効果が持続していた。過去に治療歴のない患者集団39人においては、奏効割合は85%(95%信頼区間は70-94%)で、6ヶ月経過時点で90%の患者で縮小効果が持続していた。治療開始前に測定可能な中枢神経系病変を有していた11人の患者において、中枢神経系病変の奏効割合は91%(95%信頼区間は59-100%)だった。grade 3以上の有害事象のうち主なものは、高血圧(14%)、ALT上昇(12%)、AST上昇(10%)、低ナトリウム血症(6%)、リンパ球減少(6%)だった。531人中12人(2%)は有害事象を理由にselpercatinibの使用を中止した。

 

結論:

 プラチナ併用化学療法歴のある、もしくは過去に治療歴のないRET融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者において、selpercatinibは持続性のある腫瘍縮小効果を有し、中枢神経系病変にも有効で、毒性は概ね軽微だった。 

 

(Funded by Loxo Oncology and others; LIBRETTO-001 ClinicalTrials.gov number, NCT03157128.).