・ドライバー遺伝子変異と免疫チェックポイント阻害薬の無増悪生存期間延長効果

 ドライバー遺伝子変異を有する患者に免疫チェックポイント阻害薬を使ったときの無増悪生存期間延長効果についての報告です。

 KRAS遺伝子変異とBRAF遺伝子変異があると、EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子がある患者よりも無増悪生存期間が有意に伸びるのだとか。

 ただ、KRAS遺伝子変異やBRAF遺伝子変異を有する患者では、EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子を有する患者よりも喫煙歴が目立つそうです。

 結局、遺伝子変異の有無よりも喫煙歴の方が効果予測に役立つのではないでしょうか?

 

 

 

OA05.04

 

Real-World Progression-Free Survival in Oncogenic Driver-Mutated Non-Small Cell Lung Cancer (NSCLC) Treated With Single-Agent Immunotherapy

 

Joseph Bodor et al., IASLC 2020 North America Conference on Lung Cancer

 

 

 

背景:

 免疫チェックポイント阻害薬は進行非小細胞肺がんの治療体系を劇的に変えたが、持続的な腫瘍制御効果が得られる患者は限られている。免疫チェックポイント阻害薬関連の臨床試験におけるサブグループ解析のデータから、ドライバー遺伝子変異陽性のがんはPD-1 / PD-L1阻害薬への耐性が増しているように思われるが、ドライバー遺伝子変異陽性患者でのPD-1 / PD-L1阻害薬の効果や、PD-L1発現状態もしくは喫煙歴が免疫チェックポイント阻害薬使用時の効果予測因子として有効かを実地臨床で検証した研究はほとんどない。

 

方法:

 今回の後方視的検討では、ドライバー遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がん患者における実地臨床での無増悪生存期間(rwPFS)を検証し、ドライバー遺伝子変異とPD-L1発現状態や喫煙歴がどのように関わるかも検証した。米国全土のFlatiron Health Electronic Health Recordに由来する、個人識別情報を秘匿したデータベースを用いて、なんらかのドライバー遺伝子変異を有し、免疫チェックポイント阻害薬単剤(ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ)で治療を受けた患者について分析した。ドライバー遺伝子変異の種類(EGFR、ALK、BRAF、KRAS)ごとのrwPFS中央値(月)が算出され、どのようにPD-L1発現状態や喫煙歴が関連しているかを見た。全患者集団と各ドライバー遺伝子変異集団ごとのカプランマイヤー生存曲線を作成し、log-rank testで検定した。

 

結果:

 1746人の患者が集積され、EGFR遺伝子変異(458人)、ALK融合遺伝子(65人)、BRAF遺伝子変異(146人)、KRAS遺伝子変異(1077人)それぞれの患者集団が、2014年4月23日から2019年2月28日までに免疫チェックポイント阻害薬単剤治療を受けていた。年齢中央値は69歳、58%は女性で、19%は喫煙経験がなかった。rwPFS中央値は遺伝子変異サブタイプ別で有意に異なっており(p<0.001)、KRAS遺伝子変異陽性(rwPFS中央値 3.3ヶ月、95%信頼区間は3.0-3.6ヶ月)およびBRAF遺伝子変異陽性(rwPFS中央値 3.6ヶ月、95%信頼区間は2.6-4.7ヶ月)ではEGFR遺伝子変異陽性(rwPFS中央値2.5ヶ月、95%信頼区間は2.3-2.6ヶ月)およびALK融合遺伝子陽性(rwPFS中央値 2.3ヶ月、95%信頼区間は1.6-3.1ヶ月)よりも有意にrwPFSが長かった。12ヶ月無増悪生存割合はKRAS遺伝子変異陽性患者で21%、BRAF遺伝子変異陽性患者で21%、EGFR遺伝子変異陽性患者で8%、ALK融合遺伝子陽性患者で11%だった。全体のうち795人の患者ではPD-L1発現状態のデータが利用可能だった。KRAS遺伝子変異陽性患者においてのみ、PD-L1発現状態によってrwPFSが変化していた。PD-L1発現陽性(>%)の患者の方がPD-L1発現陰性の患者よりrwPFSが延長していた(4.2ヶ月 vs 3.0ヶ月、p<0.001)。EGFR遺伝子変異陽性、ALK融合遺伝子陽性、BRAF遺伝子変異陽性の患者では、PD-L1発現状態は効果予測因子として役に立たなかった。しかし、喫煙歴があるとEGFR遺伝子変異陽性患者(rwPFS中央値 2.6ヶ月 vs 2.3ヶ月、p<0.05)とALK融合遺伝子陽性患者(rwPFS中央値 3.0ヶ月 vs 2.1ヶ月、p<0.05)ではrwPFSが有意に延長していた。