・ドライバー遺伝子異常検出におけるジレンマとmultiplex PCR

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 非小細胞肺がんの診療において、ドライバー遺伝子異常、PD-L1陽性割合といったバイオマーカー評価の重要性は今更いうまでもありません。

 どちらも様々な手法で調べられてきて、1薬剤につき1コンパニオン検査での診断しか認めないという不毛極まりない時期がありましたが、少しずつ実態に即してきている感があります。

 とは言え、まだまだ最適化されたとはいいがたいです。

 

 ドライバー遺伝子変異検索においては、個別のドライバー遺伝子異常をPCR検査を用いて検出する方法と、次世代シーケンサー(NGS)を用いてまとめて調べる方法があります。

 前者は高感度ですが、基本的には1遺伝子異常につき1検査という対応関係があるので、EGFR、ALK、ROS1、BRAF、RET、MET14skipと調べようとしたら6回分の生検組織量と手間とお金がかかります。

 出現頻度1%のドライバー遺伝子変異に組織と手間とお金をかけるのかと思うと、気が進みません。

 効率的に、頻度の高いものから調べたくなるのが人情ですが、そうしていると稀な遺伝子異常を検出したくなったときには生検組織がなくなっていた、ということが起こりえます。

 NGSを使えば全部まとめて調べられるからいいんじゃないか、と言われそうですが、そもそもNGSでの検索には相応の量の生検組織が要求されます。

 そして、PCRに比べると検査感度は劣ります。

 NGSで陰性、PCRでEGFR遺伝子変異陽性だったという話をちらほら耳にします。

 

 そんななか、中国のAmoy DiagnosticsのAmoyDx Multi-Gene Mutations Detection Kitについて、理研ジェネシス社が製造販売承認を取得したようです。

 2021/06/25付で(EGFR, ALK, ROS1, BRAF)、さらに2021/08/12付でMETエクソン14スキッピング変異が追加され、5種の遺伝子変異を1つの検査で、それも高感度のPCRベースで検出できるようになる見通しです。

https://www.rikengenesis.jp/information/press.html

 

 この検査が一般的に使われるようになると、稀な遺伝子異常も検出されやすくなるでしょう。

 本検査キットは、9種(EGFR, KRAS, BRAF, NRAS, HER2, PIK3CA, ALK, ROS1, RET)の変異を同時に検索できるので、いずれはRETに対するセルペルカチニブ、KRAS G12Cに対するSotorasib、HER2に対するT-DM1といった組み合わせに対し、本検査もコンパニオン診断として追加承認申請されるかもしれません。

http://www.amoydiagnostics.com/productDetail_35.html