肺癌画像診断と白黒反転

 最近、肺がん診断のための気管支鏡検査を見ていて、少し気がかりなことがある。

 胸部レントゲンの所見確認が軽視されているように思われてならない。

 そもそも、気管支鏡検査前に胸部レントゲン写真が撮影されていないことすらある。

 私と同世代の医師が、駆け出しのころに同じことをしていたら、きっと指導医にコテンパンにのされていたことだろう。

 

 経気管支肺生検の現場に立ってみると。

 気管支鏡ナビゲーションシステムによる事前の経路確認は抜かりない。

 性能のよい気管支鏡機材が怠りなく準備されている。

 超音波プローブやガイドシースの準備も万端である。

 あとは仕上げを御覧じろ、ということで検査を始めてみると、しばしばずっこけてしまう。

 レントゲン透視画像を見る限り、どう見ても術者が目指す病巣を把握できていないとしか思えないことがしばしばあるのだ。

 気管支鏡検査に臨む若い先生方に、ぜひ試してみてほしいことがある。

 気管支鏡検査前にぜひ一度、仰臥位正面でA-P撮影した胸部レントゲンを白黒反転させて、目指す病巣を確認してほしいのだ。

 気管支鏡検査をするときは患者さんは仰臥位正面の状態で横たわっているため、検査前の検討段階でも同じ条件のレントゲンを撮影して病巣を確認しておくことが望ましい。

 そして、白黒反転させることにより、意外なくらいに病巣が浮き上がって見えてくることがある。

 加えていうならば、CTでも白黒反転をさせると、病巣が認識しやすくなることがある。

 病巣のサイズ測定には、白黒反転を標準とした方がいいのでは、と思えることがあるくらいだ。

 私が修行していたころ、レントゲン読影のフィルムには必ず白黒反転画像が付されていたが、この年になってそのありがたみがよく分かるようになった。

 透視画像で狙うべき病巣が事前に正確に把握できているかいないかでは、雲泥の差がある。

 こうした小さな事前準備が、正確な診断のために欠かせない。