気管支鏡検査と令和2年度の診療報酬改訂

 令和2年度の診療報酬改訂について少し眺めてみた。

 気管支鏡検査との関連で、以下の内容に行き当たった。

 個人的感想を加えてまとめた。

■経気管肺生検法 4,800点

1 ガイドシースを用いた超音波断層法を併せて行った場合は、ガイドシース加算として、500点を所定点数に加算する

2 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、CT透視下に当該検査を行った場合は、CT透視下気管支鏡検査加算として、1,000点を所定点数に加算する

3 プローブ型顕微内視鏡を用いて行った場合は、顕微内視鏡加算として、1,500点を所定点数に加算する。

 ただし、1に規定するガイドシース加算は別に算定できない。

→2までは従来通り

→今回、3の項目が新設された

→不覚にも、プローブ型顕微内視鏡併用の気管支鏡検査、見たことがない

→web検索したところ、以下に行き当たった

 https://gastro.igaku-shoin.co.jp/article/show/cle_04

→私には関わりがなさそうな検査

→多分通常の診断には必要ない

■超音波気管支鏡下穿刺吸引生検法(EBUS−TBNA)(5,500点)

(1) 超音波気管支鏡(コンベックス走査方式に限る。)を用いて行う検査をいい、気管支鏡検査及び超音波に係る費用は別に算定できない

(2) 採取部位の数にかかわらず、所定点数のみ算定する

(3) 当該検査と同時に行われるエックス線透視に係る費用は、当該検査料に含まれる

 また、 写真診断を行った場合は、フィルム代のみ算定できるが、撮影料、診断料は算定できない

→従来通り

■経気管肺生検法(ナビゲーションによるもの)(5,500点)

(1) 経気管肺生検法の実施にあたり、胸部X線検査において2cm以下の陰影として描出される肺末梢型小型病変が認められる患者又は到達困難な肺末梢型病変が認められる患者に対して、患者のCT画像データを基に電磁場を利用したナビゲーションを行った場合に算定できる

 なお、この場合、CTに係る費用は別に算定できる

(2) 経気管肺生検法(ナビゲーションによるもの)は、採取部位の数にかかわらず、所定点数のみ算定する

(3) 気管支ファイバースコピーの点数は別に算定できない

→従来通り

http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e878068.html

https://www.medtronic.com/covidien/ja-jp/products/interventional-lung-solutions/superdimension-navigation-system.html

→電磁式ナビゲーション気管支鏡検査、導入している病院はおそらくそれほど多くない

→機材にかかる費用を考えると、あまり必要性を感じない

■経気管肺生検法(仮想気管支鏡を用いた場合)

(1) 経気管肺生検法の実施にあたり、胸部X線検査において2cm以下の陰影として描出される肺末梢型小型病変が認められる患者又は到達困難な肺末梢型病変が認められる患者に対して、患者のCT画像データから構築した仮想気管支鏡の画像を利用して行った場合に算定できる

 なお、この場合、CTに係る費用は別に算定できる

(2) 経気管肺生検法(仮想気管支鏡を用いた場合)は、採取部位の数にかかわらず、所定点数のみ算定する

(3) 気管支ファイバースコピーの点数は別に算定できない

→今回新設

→我が国発の技術であり、診療現場での普及具合を考えても、電磁式ナビゲーションよりもこちらが先に診療報酬を認められるべきだった

→通常の経気管支肺生検が4800点なので、仮想気管支鏡を併用することで200点加算される、ということ

→仮想気管支鏡にかかる手間や、仮想気管支鏡を用いることでの診断率向上を考えると、妥当だろう

■経気管支凍結生検法 5,500点

(1) 経気管支凍結生検法の実施に当たり、肺組織を凍結させて採取した場合に算定できる

(2) 経気管支凍結生検法と同時に行われるエックス線透視に係る費用は、当該検査料に含まれる

 また、写真診断を行った場合は、フィルム代のみ算定できるが、撮影料及び診断料は算定できない

(3) 経気管支凍結生検法は、採取部位の数にかかわらず、所定点数のみ算定する

(4) 気管支ファイバースコピーの点数は別に算定できない

 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において行われる場合に限り算定する

1 経気管支凍結生検法に関する施設基準

(1) 専ら呼吸器内科又は呼吸器外科に従事し、呼吸器系疾患の診療の経験を5年以上有する常勤の医師が2名以上配置されていること。そのうち少なくとも1名は10年以上の経験を有していること。

(2) 診療放射線技師が配置されていること。

(3) 急変時等の緊急事態に対応するための体制その他当該検査を行うための体制が整備されていること。

http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e970403.html

→最低でも1検査20,000円の消耗品コストがかかるところに、通常の経気管支肺生検に700点(7,000円)の診療報酬が追加されたところで、確実に1検査当たり13,000円の赤字が病院にのしかかる

→経気管支肺生検4,800点に、本検査を行うことで5,500点が上乗せされるならば普及を後押しするかもしれないが、700点の加算では難しそう

■悪性腫瘍組織検査(肺がんに関わるところを抜粋、一部修正)

・固形腫瘍の腫瘍細胞を検体とし、悪性腫瘍の詳細な診断及び治療法の選択を目的として悪性腫瘍患者本人に対して行った遺伝子検査について、患者1人につき1回に限り算定する

・肺癌におけるEGFR遺伝子検査については、再発や増悪により、2次的遺伝子変異等が疑われ、再度治療法を選択する必要がある場合にも算定できる

・肺癌におけるEGFR遺伝子検査とEGFR遺伝子検査(血漿)を同一月中に併せて行った場合には、主たるもののみ算定する

→組織を用いたEGFR変異検査とリキッドバイオプシーによる検査は、同一月中には保険請求できない

・肺癌におけるALK融合遺伝子検査とALK融合タンパク又はALK融合遺伝子標本作製を併せて行った場合には、主たるもののみ算定する

→ALK免疫染色とALK-FISH検査は同時算定できない

・次世代シーケンシングを用いて、抗悪性腫瘍剤による治療法の選択を目的として特定の遺伝子の変異の評価を行う際に、包括的なゲノムプロファイルを併せて取得している場合には、包括的なゲノムプロファイルの結果ではなく、目的とする遺伝子変異の結果についてのみ患者に提供すること

・また、その場合においては、目的以外の遺伝子の変異に係る検査結果については患者の治療方針の決定等には用いないこと

・EGFR,ALK,ROS1に加えてKRASも調べると、一部減額される(9,600点から8,000点へ)