最近、ぽつりぽつりとセカンドオピニオン・個別相談のご依頼を受けている。
中には、随分前にブログ上でご相談を頂いた方もいらっしゃった。
興味深いのは、ドライバー遺伝子変異陽性の患者さんからの相談が多いことだ。
こうした患者さんは分子標的薬の恩恵を受けて、内服薬での治療ができる。
むしろ治療上の悩みは少ないように考えられるが、そうでもないらしい。
分子標的薬が効かなくなったのでどうすればいいのか、あるいは、これから効かなくなったらどうすればいいのか、と悩みは深い。
そんな分子標的薬の治療対象となるドライバー遺伝子変異の中に、ROS1遺伝子再構成が含まれる。
原発性腺がん全体の1%程度とされる稀な異常だ。
ROS1肺がんがらみの過去記事を拾い上げられる限りで以下にまとめる。
ROS1 rearrangements:
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e506892.html
FDAがROS1陽性肺癌にクリゾチニブを承認しました。:
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e842469.html
ROS1検査受託開始:
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e902048.html
ROS1耐性変異:
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e930157.html
RepotrectinibとROS1肺がん:
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e958012.html
肺がん・・・治癒への展望は?(一部、ROS1肺がんの治療薬候補を記載):
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e960433.html
ROS1陽性肺がんとエントレクチニブ:
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e971674.html
これまでのところ、私のデータベースには3人のROS1陽性肺がん患者さんが含まれている。
ROS1融合遺伝子陽性の患者さんをまとめてみると、いくつか気づくことがある。
・70代女性
特別若くも高齢でもない、肺がん適齢期の女性に多い
・血栓塞栓症を合併しやすい
1人は腎血栓塞栓症、1人は下肢深部静脈血栓症を伴わない肺血栓塞栓症が見つかっている
以前の講演の際に、ItaliaのCappuzo先生もそんな風におっしゃっていた
D-dimerを測定して、異常高値ならROS1肺がんを一度は疑ってみてもいいのではないだろうか。
・胸郭内に限局しやすい
肺や胸郭内、胸腔内リンパ節に病変が集中しやすい
・PD-L1の陽性率が高い
ドライバー遺伝子変異陽性患者ではPD-L1の発現割合はむしろ低い印象があるが、今回の3人では60-100%と非常に高い
臨床的特徴で事前絞り込みを行って、ROS1融合遺伝子検査の漏れがないようにしたい。
肺がん適齢期の70代女性、血栓塞栓症合併ありもしくはD-dimer異常高値、胸郭内での病変が激しい、PD-L1強陽性なら、少なくともペンブロリズマブ導入前にはROS1をきちんと調べておくべきだ、と個人的に考える。