新型コロナウイルスはどのくらいの時間、環境に居座るのか

 進行がんの患者さんのほとんどは、いわゆる抗がん薬治療の期間中、感染症にかかるリスクが高い。

 新型コロナウイルス、がんにかかっていない人でもこれだけ恐れるのだから、進行がんの治療中の患者さんの不安は、それに倍することだろう。

 まずは新型コロナウイルスを体の中に持ち込まないように努力するのが肝要だ。

 本日配信されてきたNew England Journal of Medicine誌に、興味深い報告が掲載されていた。

 新型コロナウイルスは、どんな環境に、どれくらいの時間居座るか、というもの。

 一人一人が身の処し方を考える上で、参考になるところは多いのではないだろうか。

 私自身はというと、以下のように心がけている。

 マスク着用は必須としていない(多分効果がない)し、水道水、ティッシュペーパー、石鹸、歯ブラシ、歯磨き粉があれば事足りる。

 物資が不足するかも、と言われそうだが、究極的には水道水さえあればなんとかなる。

 そういう意味では、持続可能性(sustainability)がある。

・不特定多数が出入りする閉鎖空間内にはできるだけ立ち入らない

・不用意にあれやこれやに触らない

・2m以内での、連続30分以上の他者との接触(濃厚接触)はできるだけ避ける

・こまめに手を洗う

・こまめにうがいをする

・こまめに鼻をかむ

・食後はきちんと歯磨きをする

 文献に目を通してみたものの、細かい方法論やデータ解釈は理解できなかったので一部割愛する。

Aerosol and Surface Stability of SARS-CoV-2 as Compared with SARS-CoV-1

Neeltje van Doremalen, et al., N Engl J Med 2020

DOI: 10.1056/NEJMc2004973

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2004973?query=RP

 Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2(SARS-CoV-2)と名付けられた新型コロナウイルスは、2019年末に中国の武漢で猛威を奮い始め、現在は世界的大流行を来している。今回我々は、以前SARSを引き起こした原因ウイルスであるSARS-CoV-1と今回のSARS-CoV-2について、エアロゾル(空気中に浮遊する微小な液体、もしくは個体の粒子)や、さまざまな材料の表面での安定性について調査した。

 (方法論はややこしいので中略)

 今回は、エアロゾル、プラスチック表面、ステンレス表面、銅表面、厚紙の表面で調べた。それぞれで3回同じような実験をして、その平均値を記録した。

 SARS-CoV-2はエアロゾル中では3時間安定していた。これはSARS-CoV-1でも同様だった。 

 SARS-CoV-2は銅表面や厚紙表面よりも、プラスチック表面やステンレス表面でより安定していた(長く居座っていた)。プラスチック表面やステンレス表面では、最長72時間は安定していた。SARS-CoV-1も同様だった。銅表面では、4時間後にはSARS-CoV-2は感染力を失っていた。同様に、8時間後にはSARS-CoV-1は感染力を失っていた。厚紙表面では、24時間後にはSARS-CoV-2は感染力を失っていた。同様に、8時間後にはSARS-CoV-1は感染力を失っていた。

 エアロゾル内における両ウイルスの半減期は同様であり、約1.1-1.2時間(95%信頼区間SARS-CoV-2で0.64-2.64時間、SARS-CoV-1で0.78-2.43時間)だった。銅表面でもエアロゾルとほぼ同様のデータだった。厚紙表面では、SARS-CoV-2の半減期は4時間弱で、SARS-CoV-1よりも長かった。ステンレス表面やプラスチック表面では両ウイルスは最も長く残留し、SARS-CoV-2の半減期はステンレス表面では5.6時間、プラスチック表面における半減期は6.8時間だった。厚紙表面における実験データは、他の素材よりもばらつきがあるため、結果の解釈には注意しなければならない。

 今回の検討では、SARS-CoV-2とSARS-CoV-1の環境における安定性はほぼ同等であり、前回のSARSよりも今回のCoVID-19の流行がより深刻な理由はほかにありそうだ。それぞれの環境に応じて、SARS-CoV-2が数時間から最長3日間にかけて居座ることができるという今回の結果を見る限り、エアロゾル感染や環境表面を介した感染伝播は実際に起こりうるように思われる。