病勢進行後のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬再投与に意味はあるのか

 ここで言いたいのは、第1、第2世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬投与後にオシメルチニブを投与することに意味はあるのか、ではない。

 例えば、ゲフィチニブを投与した後、病勢進行に至った場合、オシメルチニブ以外のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬を再投与することに意味はあるのか、ということである。

 FLAURA試験の後治療解析で、日本では病勢進行後も15-20%の患者さんがEGFRチロシンキナーゼ阻害薬の投与を受けているが、それはどこに論拠があるのかと知人から問い合わせを受けた。

http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e970919.html

 EGFRチロシンキナーゼ再投与に関する記事として、こんなのが引っかかった。 

http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e501049.html

http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e955616.html

 また、改めて文献検索したら、こんなのも引っかかった。

 ざっくり見積もって、再投与した場合の投与可能期間は、3-5ヶ月程度と見積もっておけばいいのではないだろうか。

 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬の治療はもうやりつくした、そろそろEGFRチロシンキナーゼ阻害薬とは決別して、免疫チェックポイント阻害薬を使おう、という心の準備のためには、ちょうどいい期間なのかもしれない。

Efficacy and safety of rechallenge treatment with gefitinib in patients with advanced non-small cell lung cancer.

Cappuzo F et al., Lung Cancer. 2016 Sep;99:31-7

doi: 10.1016/j.lungcan.2016.06.008.

背景:

 EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺癌患者にはEGFRチロシンキナーゼ阻害薬が有効だが、そのほとんどは獲得耐性によって12ヶ月以内に病勢進行に至る。その後、化学療法をしてもなお病勢進行に至った場合、小規模な臨床試験や広報誌的研究を根拠として、多くの臨床医は実地臨床でEGFRチロシンキナーゼ阻害薬の再投与をしばしば提案する。

方法:

 今回、ゲフィチニブ再投与療法の効果、安全性、QoLへの寄与、肺がん関連の症状について評価するために、III/IV期の非小細胞肺癌患者を対象として第II相臨床試験を企画した。ゲフィチニブによる一次治療が一度は有効であったものの病勢進行に至り、その後の化学療法による二次治療でも病勢進行に至った患者を対象とした。

結果:

 61人の患者が登録された。73.8%は女性で、全例がEGFR遺伝子変異陽性の肺腺癌で、67.2%は非喫煙者だった。32人(52.5%)の患者で臨床的な効果が得られ、3人(4.9%)の患者で部分奏効を、29人(47.5%)の患者で病勢安定を認めた。無増悪生存期間中央値は2.8ヶ月、全生存期間中央値は10.2ヶ月、ゲフィチニブの投与期間中央値は3.6か月だった。頻度の高かった有害事象は下痢(27.6%)、嘔気・嘔吐(20.3%)、皮疹(14.7%)、呼吸困難(10.3%)だった。新規の有害事象は認めなかった。