sensitive relapse小細胞がんでのカルボプラチン+エトポシド併用療法再投与

 この20年で、小細胞がんと非小細胞非扁平上皮がん(≒腺がん)の薬物療法には、大きな隔たりができてしまった。

 非小細胞非扁平上皮がんは治療開始前の遺伝子変異検索、PD-L1発現状態評価が必須となった。

 殺細胞性抗腫瘍薬、分子標的薬、(血管増殖因子阻害薬を中心とした)抗体医薬、免疫チェックポイント阻害薬およびそれらの組み合わせと治療選択肢は幅広く、かつ複雑だ。

 一方の小細胞がんはあいかわらず治療効果予測因子がなく、治療選択肢となる薬は乏しい。

 キードラッグはシスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、イリノテカン、トポテカン、アムルビシン、最近になってようやく多剤併用が前提での免疫チェックポイント阻害薬が加わったといったところか。

 それでも、日本はまだ恵まれている方だ。

 今回の臨床試験が行われたフランスでは、小細胞がんの二次治療で使える薬は、わずかにトポテカンだけとのことで、今回のような臨床試験はクリニカル・クエスチョンへの回答に直結するようだ。

 たしかにカルボプラチン+エトポシド併用療法は有意に無増悪生存期間を延長しているが、それによってトポテカンの出番はなくなった、などと早合点するのは慎みたい。今回全生存期間の改善は得られなかったわけだが、標準治療は二次治療まで、三次治療以降の標準治療は存在しない、という治療選択肢が限られた疾患に引き続き対峙するにあたり、全生存期間を延長できなかった治療を標準治療に押し上げて従来の標準治療を切り捨てるのは、非効率である。むしろ、無増悪生存期間を延長する二次治療選択肢が一つ増えたので、患者背景に応じてカルボプラチン+エトポシド併用療法を優先して使用しよう、トポテカンも選択肢として残しておこう、とするのが現実的だろう。

Carboplatin plus etoposide versus topotecan as second-line treatment for patients with sensitive relapsed small-cell lung cancer: an open-label, multicentre, randomised, phase 3 trial

Nathalie Baize, MD, et al.

Lancet Oncol VOLUME 21, ISSUE 9, P1224-1233, SEPTEMBER 01, 2020

DOI:https://doi.org/10.1016/S1470-2045(20)30461-7

背景:

 トポテカンは原発性肺小細胞がんの二次治療として、現時点で欧州で唯一承認されている治療薬である。本試験は、初回治療後90日以上経過してから再燃した、いわゆる"sensitive relapse"の原発性肺小細胞がん患者に対して、カルボプラチン+エトポシド併用療法がトポテカン単剤療法よりも二次治療として優れているかどうかを検証した試験である。

方法:

 今回のオープンラベル、無作為化、第III相臨床試験にはフランス国内の38施設が参加した。組織診もしくは細胞診で確認された進行、もしくは局所再発の原発性肺小細胞がん患者で、初回のプラチナ製剤+エトポシド併用療法に反応したものの、初回治療終了から90日間以上経過したのちに再燃/進行を来したものを対象とした。その他の適格条件は、18歳以上、ECOG-PS 0-2とした。患者は1:1の割合で無作為にカルボプラチン+エトポシド併用療法群(CE群、カルボプラチンは5AUCで1日目のみ、エトポシドは100mg/?で1日目から3日目まで、経静脈投与、最大6コースまで)とトポテカン群(T群、トポテカン2.3mg/?を1日目から5日目まで、経口投与、最大6コースまで)とした。無作為化には最小化法を用い、割付調整因子としてECOG-PS、初回治療の治療反応性、治療施設とした。主要評価項目はintent-to-treat解析、中央判定による無増悪生存期間とした。

結果:

 2013年7月18日から2018年7月2日までの期間に、計164人(各群82人)を集積した。しかし、各群1人ずつが試験参加同意を撤回したため、計162人(各群81人)がintent-to-treat解析対象となった。経過観察期間中央値は22.7ヶ月(四分位間は20.0-37.3ヶ月)で、無増悪生存期間中央値はCE群(4.7ヶ月、90%信頼区間は3.9-5.5ヶ月)の方がT群(2.7ヶ月、90%信頼区間は2.3-3.2ヶ月)よりも有意に延長していた(ハザード比は0.57、90%信頼区間は0.41-0.73, p=0.0041)。全生存期間データを解析可能だった156人について調べたところ、CE群のうち58%、T群のうち68%がプロトコール治療終了後に三次化学療法を受けていた。生存期間中央値は、CE群で7.5ヶ月(95%信頼区間は5.4-9.5ヶ月)、T群で7.4ヶ月(95%信頼区間は6.0-8.7ヶ月)で、ハザード比は1.03、95%信頼区間は0.87-1.19、p=0.94だった。奏効割合はCE群で49%、T群で25%だった(p=0.0024)。奏効持続期間中央値はCE群で5.4ヶ月、T群で4.1ヶ月だった。プロトコール治療開始から6か月間経過時点で、CE群の31%、T群の10%が病勢進行に至っていなかった。

Grade 3-4の有害事象の頻度が高かったものは好中球減少(CE群 11人(14%)、T群18人(22%))、血小板減少(CE群 25人(31%)、T群29人(36%))、貧血(CE群20人(25%)、T群17人(21%))、発熱性好中球減少(CE群5人(6%)、T群9人(11%))、衰弱(CE群7人(9%)、T群8人(10%))だった。入院を要するような重篤な有害事象は、CE群の37%、T群の43%で認められた。治療関連有害事象によりプロトコール治療中断となったのはCE群の17%、T群の12%にのぼり、最も頻度の高かった要因は血小板減少症だった。治療関連死はT群で2人発生し、いずれも敗血症を伴う発熱性好中球減少だった。CE群では治療関連死はなかった。

結論:

 Sensitive relapseの小細胞肺がん患者において、カルボプラチン+エトポシド併用療法を再投与することは理にかなった二次治療選択肢と考えられた。