・ETER701試験・・・進展型小細胞がんに対するBenmelstobart+Anlotinib+カルボプラチン+エトポシド併用療法の第III相試験



 

 benmelstobartは中国のApollomics/Chia Tai Tianqing Pharmaceutical Groupが権利を有するマウス由来のIgG1κクラスの抗PD-L1抗体なんだそうです。

 また、anlotinibは、VEGFR、FGFR、PDGFR、c-kitを阻害するチロシンキナーゼ阻害薬なんだそうで、こちらも調べた限りでは中国資本がライセンスを保持しているような印象を受けました。

 進展型小細胞肺がんに対してカルボプラチン+エトポシド+抗PD-L1抗体を用いるコンセプトは、既にアテゾリズマブ(IMpower133試験)やデュルバルマブ(CASPIAN試験)で有効性が証明されています。

 そのため、アテゾリズマブやデュルバルマブに代えてbenmelstobartを使用するだけなら、あまり新鮮味はありません。

 しかし、benmelstobartにマルチキナーゼ阻害小分子化合物であるanlotinibを併用するとなると、これは新しいコンセプトです。

 今回のETER701試験、カルボプラチン+エトポシド+benmelstobart+anlotinib併用療法がカルボプラチン+エトポシド併用療法を無増悪生存期間、全生存期間で有意に上回ったとのことで、喜ぶべきことです。

 しかし、私が本当に知りたいのはカルボプラチン+エトポシド併用療法にbenmelstobartを上乗せしたらIMpower133試験やCASPIAN試験の結果が再現されるのか、あるいはanlotinibを上乗せしたらさらに有望な結果が得られるのではないか、です。

 本試験がこうした命題を段階的に検証するデザインでないことが残念です。

 

 

 

 

Benmelstobart with Anlotinib plus Chemotherapy as First-line Therapy for ES-SCLC: A Randomized, Double-blind, Phase III Trial

 

Y. Cheng et al. 
WCLC2023 abst.#OA01.03

 

背景:

  小細胞肺がんは治療抵抗性の悪性腫瘍である。進展型小細胞肺がんに対し、免疫化学療法(免疫チェックポイント阻害薬+プラチナ併用化学療法)は化学療法単独と比して2か月の生存期間延長効果をもたらしたが、長期生存には至らず、いまだ改善の余地がある。治療効果が限られるのは、免疫機構の抑制、血管新生といった複雑な小細胞肺がん病巣の微小環境に起因するのかもしれない。腫瘍微小環境を改変したり、腫瘍血管を正常血管に近づけることで、病巣への免疫細胞の浸潤、免疫チェックポイント阻害薬との相乗効果が促されるかもしれない。小細胞肺がんの複雑かつ多様な腫瘍微小環境を考慮し、新たに開発されたPD-L1阻害薬であるbenmelstobartと血管新生阻害薬のanlotinibを標準化学療法と併用することにより、進展型小細胞肺がんに対する治療有効性の改善、生存期間の延長、管理可能な有害事象プロファイルを確認することを目的として臨床試験を計画した。

 

方法:

 今回の臨床試験は、進展型小細胞肺がんの初回治療に関する多施設共同、プラセボ対照、ランダム化第III相比較試験である。対象患者は以下の3群に1:1:1の割合で無作為に割り付けられた。

A群:benmelstobart、anlotinib、カルボプラチン、エトポシドを3週間隔で4コース投与し、その後にbenmelstobartとanlotinibを維持療法として継続する

B群:偽薬1、anlotinib、カルボプラチン、エトポシドを3週間隔で4コース投与し、その後に偽薬1とanlotinibを維持療法として継続する

C群:偽薬1、偽薬2、カルボプラチン、エトポシドを3週間隔で4コース投与し、その後偽薬1、偽薬2を維持療法として継続する

 維持療法は病勢進行に至るか、忍容不能の有害事象に見舞われるかするまで継続した。主要評価項目は全生存期間(OS)、独立委員会(IRC)判定による無増悪生存期間(PFS)とし、intention-to-treat解析を行った。今回はA群 vs C群の解析結果について報告する。

 

結果:

 2021/03/18から2021/12/18の期間で、中国国内72施設から738人の患者が本試験に参加した。そのうち246人はA群に、247人はC群に割り付けられた。データカットオフ時点(2022/05/14)までの観察期間中央値は14.0ヶ月(12.8-15.5)だった。A群はC群に対して有意にPFS(中央値はA群6.9ヶ月 vs C群4.2ヶ月、ハザード比0.32(95%信頼区間0.26-0.41)、p<0.0001)、OS(中央値はA群19.3ヶ月 vs C群11.9ヶ月、ハザード比0.61(95%信頼区間0.47-0.79)、p=0.0002)を延長し、奏効割合(A群81.3% vs C群66.8%)、奏効持続期間(中央値はA群5.8ヶ月 vs C群3.1ヶ月)も優れていた。2年生存割合はA群41.8%、C群24.2%だった。grade 3以上の有害事象はA群の94.3%、C群の89.0%に認めた。grade3以上の治療関連有害事象はA群の93.1%、C群の87.0%で、grade5(治療関連死)の有害事象はA群の4.5%、C群の1.6%に認めた。頻度の高かったgrade3以上の有害事象は両群ともに好中球減少、血小板減少、白血球減少だった。免疫関連有害事象はA群の42.7%、C群の19.1%で認めた。

 

結論:

 benmelstobart、anlotinib、カルボプラチン、エトポシドの併用療法は、カルボプラチン、エトポシド併用療法と比較して7.4ヶ月も生存期間を延長し、進展型小細胞肺がんに対する臨床試験史上最長の生存期間を達成した。PFSも初めて6ヶ月を超えた。安全性は忍容可能だった。