・ADAURA試験・・・全生存期間解析結果

 

 2023年の米国臨床腫瘍学会で、完全切除後のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対する術後補助療法としてのオシメルチニブの有効性を検証した第III相ADAURA試験について、5年間追跡調査後の生存期間解析に関する報告がありました。

 要は、術後オシメルチニブ3年間服用が果たして生存期間延長に寄与するのか、ということなのですが、私なりに感じたことを以下にまとめます。

1)病理病期が進行しているほど、オシメルチニブによる5年生存割合改善効果が高い

2)術後補助化学療法の有無は、あまり5年生存割合の改善に寄与していない

3)IB期やII期の患者でも、生存曲線を見る限り、5年経過後に生存割合の差が開きつつあるように見える

 3)については興味深いところで、参考データ扱いでもいいから10年間くらいは追跡調査してほしいなあ、というのが正直なところです。そこまで見ないと、3年分のオシメルチニブ内服に値する効果がIB期やII期で見られるのかわからない、という気がします。

 

 また、周術期のオシメルチニブに関する以下の臨床試験が進行中だそうです。

 術前補助療法というコンセプトはともかくとして、より早期の患者を対象とするADAURA2試験や、より長く服用させようとするTARGET試験については、そこまでする必要があるのかな?という印象を受けます。

 

・第III相ADAURA2試験

 病理病期IA2-IA3期の患者を対象にオシメルチニブの術後補助療法の有効性を検証

・第III相NeoADAURA試験

 オシメルチニブの術前補助療法の有効性を検証

・第II相TARGET試験

 オシメルチニブの術後補助療法の服用期間を5年間に延長

 

 

 

 

Overall Survival with Osimertinib in Resected EGFR-Mutated NSCLC

 

Masahiro Tsuboi et al.
N Engl J Med. 2023 Jun 4. 
doi: 10.1056/NEJMoa2304594. 
Online ahead of print.

 

背景:

 ADAURA試験において、病理病期IB-IIIA期の完全切除後EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者に対して、先行する術後補助化学療法の有無に関わらず、オシメルチニブは有意に無病生存期間を延長することが示された。今回はもともと予定していた、全生存期間に関する最終解析結果を報告する。

 

方法:

 今回の第III相、二重盲検臨床試験において、適格患者をオシメルチニブ群とプラセボ群に1:1の割合で無作為割付した。オシメルチニブ群ではオシメルチニブ80mg/日を、プラセボ群ではプラセボを服用させ、再発が確認されるか、規定服用機関の3年間を完遂するか、治療中止規定を満たすかするまで継続した。主要評価項目はII-IIIA期患者に関する、担当医判定による無病生存期間とした。副次評価項目にはIB-IIIA期患者に関する無病生存期間、全生存期間、安全性が含まれた。

 

結果:

 2015年11月から2019年2月にかけて、682人の患者に対して無作為割付を行い、オシメルチニブ群に339人、プラセボ群に343人が割り付けられた。2022年04月11日までにすべての患者がプロトコール治療を完遂するか、何らかの理由で中止していた。プロトコール治療を受けた期間の中央値は、オシメルチニブ群35.8ヶ月(0-36)、プラセボ群25.1ヶ月(0-39)だった。II-IIIA期患者の5年生存割合は、オシメルチニブ群85%(95%信頼区間79-89)、プラセボ群73%(95%信頼区間66-78)だった(ハザード比0.49、95.03%信頼区間0.33-0.73、p<0.001)。IB-IIIA期患者の5年生存割合は、オシメルチニブ群88%(95%信頼区間83-91)、プラセボ群78%(95%信頼区間73-82)だった(ハザード比0.49、95.03%信頼区間0.34-0.70、p<0.001)。プロトコール治療終了後に次治療を開始するか、あるいは患者が死亡するまでの期間中央値は、オシメルチニブ群は未到達で、5年経過後も70%以上の患者でどちらのイベントも発生していなかった。プラセボ群では同期間中央値は34.7ヶ月(95%信頼区間28.8-44.6)で、この評価項目に関するハザード比は0.28(95%信頼区間0.22-0.35)だった。前回のカットオフ時点から追加で1件、CoVID-19による肺炎が重篤な有害事象として報告された。担当医によってプロトコール治療とは関連しない有害事象と判断され報告されなかったもので、この患者はその後完全に回復した。オシメルチニブ群の安全性プロファイルについて、初回報告時点からの変更はなかった。

 

結論:

 完全切除されたEGFR遺伝子変異陽性のIB-IIIA期非小細胞肺がん患者に対するオシメルチニブによる術後補助療法は、有意に生存期間を延長した。