・第III相ALINA試験の中間解析結果・・・切除可能ALK肺がんに対する術後補助アレクチニブ療法

 

 ALK陽性の進行非小細胞肺がんに対し、アレクチニブは極めて有効です。

 有害事象も軽微ですし、肺がんのみならず、固形がん全般として俯瞰しても、治療効果と安全性がアレクチニブほど高いレベルで両立するがん薬物療法はそうそうありません。

 当然、術後補助療法としてどうかとか、局所進行状態における根治的放射線照射との併用効果はどうなのかとか、治療を発展させたくなります。

 今回は術後補助療法としてどうなのか、ということで、第III相ALINA試験の中間解析結果が報告されました。

 試験デザインはEGFR陽性肺がんにおけるADAURA試験と比べてシンプルで、術後補助アレクチニブ vs 術後補助プラチナ併用化学療法という設定で、前者の方が圧倒的によさそうです。

 ただ、安全性の面ではアレクチニブでもそれなりに有害事象が発生していますので、注意が必要そうです。

 

 


ALINA: Efficacy and safety of adjuvant alectinib versus chemotherapy in patients with early-stage ALK+ non-small cell lung cancer (NSCLC)

B.J. Solomon et al.
ESMO Congress 2023 abst.#LBA2
Annals of Oncology (2023) 34 (suppl_2): S1254-S1335. 10.1016/annonc/annonc1358

 

Alectinib in Resected ALK-Positive Non–Small-Cell Lung Cancer

Yi-Long Wu et al.
N Engl J Med 2024;390:1265-1276
DOI: 10.1056/NEJMoa2310532

 

背景:

 完全切除後、病理病期IB-IIIA期のALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者に対して推奨される治療は、プラチナ併用化学療法による術後補助療法だが、本治療による生存期間延長効果はそこそこに留まる。ALK融合遺伝子陽性進行非小細胞肺がんに対しては、アレクチニブが初回治療として好まれる。今回は、完全切除後ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者を対象に、術後補助療法としてのアレクチニブと化学療法の有効性と安全性を比較する国際共同オープンラベル第III相ランダム化比較試験であるALINA試験の中間解析結果について報告する。

 

方法:

 18歳以上、ECOG-PS 0-1、完全切除後、病理病期IB(原発巣最大径4cm以上)-IIIA期(UICC / AJCC 第7版準拠)、ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん患者を対象とした。対象患者をアレクチニブ群(A群)と化学療法群(CT群)に1:1の割合で無作為割り付けした。A群ではアレクチニブ600mgを1日2回服用し、CT群は21日周期で最大4コースまでプラチナ併用化学療法を行った。割り付け調整因子は病理病期(IB期 vs II期 vs IIIA期)、人種(アジア人 vs 非アジア人)とした。アレクチニブは再発、忍容不能の毒性、治療同意撤回のいずれかに至るまで、24ヶ月を上限として治療継続した。主要評価項目は担当医評価による無病生存期間(DFS)とした。病理病期II-IIIA期の患者集団を対象に解析し、有意差が認められたらIB-IIIA期全体でも評価することとした。その他の評価項目には中枢神経系無病生存期間(CNS-DFS)、全生存期間(OS)、安全性を含めた。

 

結果:

 総計257人の患者が無作為割り付けされた(A群130人、CT群127人)。背景因子に偏りはなかった。2023/06/26のデータカットオフ時点で、追跡期間中央値は27.8ヶ月だった。II-IIIA期集団(ハザード比0.24、95%信頼区間0.13-0.45)、IB-IIIA期集団(ハザード比0.24、95%信頼区間0.13-0.43)と、A群が優位にDFSを延長した。IB-IIIA期全体として、臨床的に意義のあるCNS-DFSも確認された(ハザード比0.22、95%信頼区間0.08-0.58)。OSについてはイベントが不十分で解析不能だった。想定外の有害事象は観察されなかった。

 

結論:

 完全切除後ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対し、術後補助療法としてのアレクチニブはプラチナ併用化学療法と比較して有意にDFSを延長し、新しい治療戦略といってよい。