・IMpower010試験 アジア人サブグループ解析結果

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 2022年日本臨床腫瘍学会総会で、IMpower010試験のアジア人サブグループ解析結果が報告されていました。

 IB期は術後2年間UFT内服のままでよしとして、II-IIIA期をどのように扱うかですね。

 アテゾリズマブ地固め療法を行うにあたり、全てのII-IIIA期の患者さんを対象とするか、あるいはハザード比0.80で線を引いて、PD-L1≧1%のII-IIIA期の患者さんのみを対象とするか。

 もう少し追跡期間をとって、データの推移を見極めてから実臨床での使い方を見極めた方が良さそうな気がします。

 

・IB期-IIIA期のアジア人サブグループ

 無病生存期間中央値(95%信頼区間)、3年無病生存割合

  アテゾリズマブ群:42.3ヶ月(30.5-未到達)、51.3%

  コントロール群:37.2ヶ月(24.5-未到達)、57.7%

  ハザード比0.83(95%信頼区間0.67-0.99)

 

・II期-IIIA期のアジア人サブグループ

 無病生存期間中央値(95%信頼区間)、3年無病生存割合

  アテゾリズマブ群:42.3ヶ月(30.2-未到達)、56.7%

  コントロール群:31.6ヶ月(24.0-未到達)、49.6%

  ハザード比0.83(95%信頼区間0.55-1.25)

 

・がん細胞のPD-L1発現≧1%、II期-IIIA期のアジア人サブグループ

 無病生存期間中央値(95%信頼区間)、3年無病生存割合

  アテゾリズマブ群:42.3ヶ月(30.5-未到達)、60.1%

  コントロール群:31.4ヶ月(18.3-未到達)、49.4%

  ハザード比0.63(95%信頼区間0.37-1.09)

 3年生存割合

  アテゾリズマブ群:88.6%

  コントロール群:88.8%

  ハザード比0.70(95%信頼区間0.25-2.01)

 

 

IMpower010: results from Asian patients in a Phase 3 study of adjuvant atezolizumab in resected stage IB-IIIA NSCLC

 

Kenmotsu et al.
2022年日本臨床腫瘍学会総会、abst.#PS1-5 

 

背景:
 第III相IMpower010試験において、完全切除後のII-IIIA期非小細胞肺がん患者に対し、術後補助化学療法後のアテゾリズマブ地固め療法が無病生存期間を有意に延長した(ハザード比0.79、95%信頼区間0.64-0.96)。また、がん細胞のPD-L1発現が1%以上のII-IIIA期患者集団ではハザード比0.66、95%信頼区間0.50-0.88とさらに良好な結果を残した。今回は、IMpower010試験のアジア人サブグループ(日本、中国、台湾、韓国、香港)の解析結果について報告する。

 

方法:
 AJCC/UICC肺がんステージ分類第7版準拠の完全切除後IB期(腫瘍長径40mm以上)-IIIA期非小細胞肺がん患者で、21日間周期、最大4コースのシスプラチン併用術後補助化学療法を受けたものを対象として、アテゾリズマブ1200mgを3週ごと、16コース投与する群と無治療経過観察する群に1:1の割合で無作為に割り付けた。主要評価項目は無病生存期間(DFS)とし、(1)SP263抗体を用いた評価によるがん細胞のPD-L1発現割合≧1%かつ病理病期II-IIIA期の患者サブグループにおけるDFS、(2)全ての病理病期II-IIIA期の患者サブグループにおけるDFS、(3)全対象患者のITT解析によるDFSと階層的に有効性を解析した。

 

結果:
 IMpower010試験全体としては、1280人の患者を集積し、1269人が術後補助化学療法を受け、1005人が無作為割付された。このうち、アジア人サブグループは233人を占めていた。2021年1月21日のデータカットオフ時点で、追跡期間中央値は32.5ヶ月だった。両群間に背景因子のバラツキはなかった。
(1)がん細胞のPD-L1発現割合≧1%かつ病理病期II-IIIA期の患者サブグループ(129人)におけるDFS:ハザード比0.63(95%信頼区間0.37-1.09)
(2)全ての病理病期II-IIIA期の患者サブグループ(219人)におけるDFS:ハザード比0.83(95%信頼区間0.55-1.25)
(3)全対象患者(233人)のITT解析によるDFS:ハザード比0.83(95%信頼区間0.55-1.25)
 全生存期間データは、試験全体としてもアジア人サブグループとしても時期尚早でデータ不足だった。アジア人サブグループにおけるアテゾリズマブの投与コース数中央値は16コース(範囲:1-16)だった。全グレードの有害事象発生割合は、アテゾリズマブ群で95%、無治療経過観察群で71%だった。Grade 3/4の有害事象発生割合は、アテゾリズマブ群で24%、無治療経過観察群で13%だった。患者死亡に至る重篤な有害事象はアテゾリズマブ群の0.8%に認めた。アテゾリズマブ群において、プロトコール治療中止に至る有害事象は21%に認めた。

 

結論:
 アジア人サブグループにおいても全体と同様に、がん細胞のPD-L1発現割合≧1%かつ病理病期II-IIIA期の患者サブグループにおいて、アテゾリズマブ群でDFSの改善を認めた。安全性についても、全体と同様の結果だった。

 

 

 IMpower010試験全体についてはこちらから参照ください。

 PD-L1発現状態をバイオマーカーとしてアテゾリズマブを地固めで使う治療戦略は、長期生存率の向上という点でとても魅力的ですが、きちんと全生存期間の延長がもたらされるかどうかを確認する必要があります。本治療の評価が定まるのは、もう少し未来の話でしょう。

 

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