・第III相IPSOS試験・・・PS不良、高齢の進行非小細胞肺がんに対するアテゾリズマブ一次治療

 

 PS不良、高齢、背景疾患といった理由でプラチナ併用化学療法が使えない進行非小細胞肺がん患者さんに対して、アテゾリズマブ単剤療法の生存期間延長効果を検証した第III相IPSOS試験。

 目を瞠るほどの結果を残したわけではありませんが、生存期間を延長して、副作用は軽く済み、QoLも保たれたとなれば、mildly effective, less toxicということで新しい標準治療として十分成り立ちます。

 コスト面ではextremely toxicかも知れませんが。

 

 

 

First-line atezolizumab monotherapy versus single-agent chemotherapy in patients with non-small-cell lung cancer ineligible for treatment with a platinum-containing regimen (IPSOS): a phase 3, global, multicentre, open-label, randomised controlled study

 

Siow Ming Lee et al.
Lancet. 2023 Jul 6;S0140-6736(23)00774-2. 
doi: 10.1016/S0140-6736(23)00774-2.

 

背景:

 進行非小細胞肺がん患者に対する免疫チェックポイント阻害薬療法隆盛の一方で、その一次治療に関する主要な臨床試験は、ECOG PS 0-1の患者と65歳以下の若い患者に関するものに限られる。今回はプラチナ併用化学療法不耐の患者を対象に、一次治療としてアテゾリズマブ単剤療法と単剤化学療法の有効性と安全性を検証する。

 

方法:今回のオープンラベル無作為化第III相試験は、アジア、欧州、北米、南米23か国、91施設の共同研究として行った。IIIBもしくはIV期の非小細胞肺がん患者で、ECOG PS 2-3、70歳以上かつECOG PS 0-1かつ背景疾患を有する、何らかの理由でプラチナ併用化学療法不適格など、プラチナ併用化学療法がふさわしくないと判断された者を対象とした。患者はブロックランダム化法(ブロック1組に6人を割り当て)を用いてアテゾリズマブ群(A群)と単剤化学療法群(C群)に2:1の割合で無作為割り付けした。A群はアテゾリズマブ1,200mg/回を3週間ごとに反復投与、B群は単剤化学療法(ビノレルビン、ジェムシタビンのいずれかを各地域ごとの標準投与法に基づいて投与)を3週間ごとあるいは4週間ごとに反復投与された。主要評価項目はintention-to-treat解析による全生存期間とした。安全性は、プロトコール治療を受けた全ての患者を安全性解析集団と定義して解析した。

 

結果:

 2017/09/11から2019/09/23にかけて、453人の患者が登録され、A群に302人、C群に151人が割り付けられた。追跡期間中央値は41.0ヶ月(四分位間36.7-47.8)、年齢中央値は75歳(四分位間69.0-80.0)で、140人(31%)は80歳以上だった。ECOG-PA 2-3の患者は全体の83%を占めていた。A群はC群と比較して有意に全生存期間を改善した(生存期間中央値10.3ヶ月(95%信頼区間9.4-11.9) vs 9.2ヶ月(95%信頼区間5.9-11.2)、層別化ハザード比0.78(95%信頼区間0.63-0.97)、p=0.028)。6ヶ月生存割合はA群64%、C群58%、12ヶ月生存割合はA群44%、C群39%、18ヶ月生存割合はA群31%、C群24%、2年生存割合は、A群24%(95%信頼区間19.3-29.4)、C群12%(95%信頼区間6.7-18.0)だった。無増悪生存期間中央値はA群4.2ヶ月(95%信頼区間3.7-5.5)、C群4.0ヶ月(95%信頼区間2.9-5.4)だった(層別化ハザード比0.87、95%信頼区間0.70-1.07)。1年無増悪生存割合はA群20%、C群14%、2年無増悪生存割合はA群9%、C群2%だった。後治療はA群の20%(うち16%が化学療法)、C群の30%(うち免疫チェックポイント阻害薬が19%)が受けていた。C群では、1年経過後に生存していた52人のうち21人(40%)が、2年経過後に生存していた16人のうち9人(56%)が後治療として免疫チェックポイント阻害薬を使用していた。化学療法と比較して、アテゾリズマブは健康関連QoLの安定化ないしは改善に寄与し、grade 3-4の治療関連有害事象割合が低く(16% vs 33%)、治療関連死割合も低かった(1% vs 3%)。

 

結論:

 プラチナ併用化学療法不耐の進行非小細胞肺がん患者に対する一次治療として、アテゾリズマブ単剤療法は単剤化学療法との比較において、2年生存割合を倍加させるほど全生存期間を延長し、QoLを保ち、安全性も高かった。