・新型コロナウイルス感染症、7つめの波が打ち寄せる

 新型コロナウイルス感染症の7つ目の波、なかなかに厄介です。

 我が国における日々の新規感染患者数が世界のトップを走ることになるとは、少し前までは予想もしていませんでした。

 大分県内の日々の新規感染患者数が2000人を超えることもまた、予想外でした。

 

 最近の出来事を並べてみると、

・発熱外来で新型コロナウイルス感染と診断する患者さんが大きく増えた

・日によっては陽性率が60%を超える

クラスターと認定されないまでも、勤め先法人内のあちこちで、散発的に職員が感染している

・勤め先に併設された保育園内でも関係者が散発的に感染していて、保育園が閉鎖されると保護者も仕事を休まざるを得ない

→園児が感染すると、園児が回復するまでの10日間+回復後の7日間、計17日間は保護者は出勤できない

→病院をはじめ、法人内の各部署が機能不全に陥る

・近隣の総合病院で大規模なクラスターが発生し、診療制限がかかった

→入院患者に加え、その3-5倍程度の人数の病院職員の感染が確認されたとか

→3ケタにのぼる感染者数なのだとか

・近隣の精神科病院でさらに大規模なクラスターが発生し、自院内で対応せざるを得ない

→こちらも2ケタ台後半の感染者数なのだとか

新型コロナウイルス感染症専用病棟に勤務している職員が新型コロナウイルス感染症を発症し戦線離脱、残った職員で厳しい勤務シフトを回さざるを得なくなり、他部署も人員不足で補充ができない

新型コロナウイルス感染症受け入れ指定医療機関が、かかりつけの新型コロナウイルス陽性者入院受け入れをしない

→直近1週間で、少なくとも受け入れ医療機関2施設から、入院初期対応の依頼を受けた

→後から調べてみると、2施設ともにその時点で新型コロナウイルス感染症病棟の入院患者0だった

→新政権が発足したら、各施設の受け入れ実績を公表すると発表があったが、その後どうなったのだろう?

・住宅型有料老人ホームでクラスターが発生し、ご家族が新型コロナウイルス感染症治療薬使用を希望しているにもかかわらず、施設嘱託医が「今回の株は重症化しないから、対症療法で経過観察でいいでしょ」と1日500-1000ml程度の輸液のみ指示

→数日中に複数の患者が急性呼吸不全に陥る

→「これ以上は対応不能」とのことで保健所へ転送要請

→中等症IIとして当院で入院受け入れしたものの、うち1人はさきほどご永眠された

 

 辛うじてクラスター発生の基準を満たしてはいないものの、現在勤め先の複数の病棟に濃厚接触者と認定された患者さんが分散しており、新規入院受け入れができない状況になっています。

 そんな中、大規模クラスターが発生した総合病院からの要望で、新型コロナウイルス感染症治療後の療養目的の患者さん受け入れはせざるを得ない始末です。

 

 オミクロンBA.5株は、感染力は高い一方、重症化はしにくいと一般に言われます。

 ただし、これは感染者総数が増えても重症者数は増えない、ということを意味するわけではありません。

 大分県において、新規感染者数は2022/06/26で77人、2022/07/26で2140人でした。

 実に27倍です。

 重症化しにくいと言っても、一定程度は重症化する患者さんが出てきます。

 私の手元にある資料では、2022/07/28現在で大分県内の新型コロナウイルス感染入院患者数は227人、そのうち酸素投与を要する中等症・重症の患者さん総数は45人、約20%です。

 入院患者さんだけに絞って言えば、5人に1人は酸素投与が必要だということです。

 重症化リスクの高い人は重症化します。

 BA.5には抗体医薬は効果が低いとされており(添付文書に明記されています)、現場ではロナプリーブやゼビュディはもはや使用していません。

 個人的には、重症化リスクの高い人には早期にラゲブリオを服用させるのが重要と考えており、新型コロナウイルス感染症の診断をする全ての医師の責務だと思います。

 それをしないのならば、病状が悪化しても最後まで責任を以て自分で診てほしい。

 

 我が国における新型コロナウイルス対策は、政府や都道府県による規制から、徐々に個人個人の意識に委ねられる方向に向かいつつあります。

 感染力が高いウイルス株に置き換わったのだから、対策を緩めれば当然感染します。

 無防備に会食すれば感染リスクは高まります。

 無防備に旅行に行けば感染リスクは高まります。

 お互いにマスクをしていなければ感染リスクは高まります。

 ウイルス株が変わっても、社会経済状況が変わっても、基本的な感染対策の考え方は変わりません。

 感染リスクが高い行動をとるかどうかはもはや個人の裁量に委ねられましたが、結果として体調を崩してしまった場合に、いまのわが国で当たり前の医療が受けられるとは考えない方がいいでしょう。

 検査キットはおろか、解熱薬のアセトアミノフェンカロナール)すら入手困難になったという事実は、相当に深刻に受け止めるべきです。