2022-01-01から1年間の記事一覧

・ビタミンC、自然治癒、ルルドの泉

先日に続き、いま読んでいる本からの引用です。 決してブログのネタにするために読み始めたわけではなく、どちらかというとiDeCoやNISAでの銘柄選びの基礎知識を得ようと思って手を付けた本なのですが、なぜかがんに関わる記述が随所に見られます。 昨今大量…

・METエクソン14スキップ変異陽性肺がんに対するamivantamabの効果

EGFRエクソン20挿入変異陽性肺がんに対する有効性が報告されているamivantamabですが、抗EGFR抗体としての側面に加え、抗MET抗体としての一面もまた持っています。 METエクソン14スキップ変異陽性肺がんに対するamivantamabの効果もCHRYSALIS試験では検証さ…

・中央値からその先へ

このブログでは、よく参考データとして「中央値」を引き合いに出します。 生存期間「中央値」。 無増悪生存期間「中央値」。 奏効持続期間「中央値」。 追跡期間「中央値」。 期間のデータを扱う時には、ほぼ決まって「中央値」が登場します。 なぜでしょう…

・EGFRエクソン20挿入変異とCLN-081

EGFRエクソン20挿入変異に対する新たな薬、CLN-081の報告です。 開発段階としてはまだ早期の段階ではありますが、amivantamabに比肩する有効性を示しているような印象を受けます。 CLN-081は米国のカリナン・オンコロジー社が開発した薬で、2022/05/12付で大…

・第II相BTCRC LUN 16-081試験・・・III期非小細胞肺がんに対する化学放射線療法後の複合免疫療法

冒頭に掲げたのは、私の母の胸部レントゲン写真です。 1枚目は放射線肺臓炎発症前、2枚目は放射線肺臓炎発症後です。 2枚目の写真では左肺門部から心陰影に隠れた左肺下葉にかけて放射線肺臓炎が出現しており、左横隔膜の不明瞭化や左肋骨横隔膜下区の鈍化(…

・第III相SKYSCRAPER-02試験・・・進展型小細胞癌IMpower133レジメンへのTiragolumab上乗せ効果は?

抗TIGIT抗体、Tiragolumab。 現在進展型小細胞肺がん一次治療の標準となったアテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド併用療法、いわゆるIMpower133レジメンへの上乗せ効果が期待されたSKYSCRAPER-02試験ですが、残念ながらうまくいかなかったようです。 …

・RET肺がんにセルペルカチニブを始めたあと、中枢神経系転移はどうなるか

セルペルカチニブを使用しているRET融合遺伝子陽性進行非小細胞肺がん患者さんにおいて、中枢神経系転移(脳転移+脊髄転移+髄膜癌腫症)がどの程度制御されているかを調べた研究です。 データを見る限り、治療開始から1年間と短い観察期間ではありますが、…

・プラチナ併用化学療法と免疫チェックポイント阻害薬使用後の、ペンブロリズマブ+ラムシルマブ併用療法

免疫チェックポイント阻害薬とラムシルマブの併用療法、懐疑的な目で見ていたのですが、自分の立ち位置を考え直さなくてはならなくなりました。 二次治療以降の選択肢が一つ増えるのは喜ばしいことで、例えばプラチナ併用化学療法+ペンブロリズマブ併用療法…

・KRYSTAL-1試験、第II相部分

同じ研究に関する発表ですが、学会発表と論文報告では感触が異なりますね。 治療歴のあるKRAS G12C陽性肺がんに対して、第2の阻害薬、adagrasibが有用との報告です。 KRYSTAL-1: Activity and safety of adagrasib (MRTX849) in patients with advanced/meta…

・CROWN試験の後治療

進行ALK肺がんに対するローラチニブ初回治療の有効性を検証した第III相CROWN試験。 病勢進行後の後治療の効果はどうか、という報告がありました。 そもそも、評価時点でローラチニブを継続使用している患者さんが全体の6割以上に上るとのことで、後治療につ…

・医療費を削減するための臨床研究と、SATOMI臨床研究プロジェクト

先だって、妻がドラマを録画する空き容量を確保するために、昔の「報道特集」で取り扱われたニボルマブの話題を取り上げました。 oitahaiganpractice.hatenablog.com その2日後、偶然にもその後の経過を追うような話題が、NHKの「おはよう日本」に取り上げら…

・特発性肺線維症とPDE4阻害薬

呼吸器内科医という仕事をしていると、特発性肺線維症患者の診療は避けて通れません。 他院から相談を受けて、可能な治療はやりつくしたものの病状のコントロールが得られず、以後終末期まで管理してほしいという特発性肺線維症の患者さんの診療を引き受ける…

・ニボルマブ+イピリムマブ+化学療法併用の3年生存割合は25-30%・・・CheckMate9LA試験、3年間追跡調査結果

CheckMate-227試験の5年追跡調査結果に続き、CheckMate-9LA試験の3年追跡調査結果です。 ニボルマブ+イピリムマブ+化学療法併用の3年生存割合はおおむね25-30%程度といったところでしょうか。 奏効割合はPD-L1≧1%の集団でより高いものの、奏効持続期間はPD…

・ニボルマブ+イピリムマブ併用療法の5年生存割合は20-25%程度・・・CheckMate-227試験、5年間追跡調査結果

CheckMate227試験における、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法の5年間追跡結果が公表されていました。 PD-L1<1%では5年生存割合20%、PD-L1≧1%なら5年生存割合25%。 つまるところ、4-5人に1人は5年生存するということです。 さらに喜ばしいのは、5年生存した…

・血液中の好中球 / リンパ球比率と免疫チェックポイント阻害薬の効果

血液中の好中球 / リンパ球比率が高いと、つまり白血球全体におけるリンパ球比率が相対的に少ないと、免疫チェックポイント阻害薬の効果が弱まる、としばしば言われます。 昨今、腫瘍病巣内における炎症細胞浸潤が乏しいと免疫チェックポイント阻害薬の効果…

・その後のCHRYSALIS-2試験・・・オシメルチニブ耐性化後のAmivantamab+Lazertinib併用療法

オシメルチニブも化学療法も卒業したEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者さんに対するAmivantamab+Lazertinib併用療法。 我が国では、以下のリンクにあるようにオシメルチニブ耐性となったあと、本併用療法にプラチナ併用化学療法を併用した場合、プラチ…

・第II相NADIM II試験・・・術前ニボルマブ+カルボプラチン+パクリタキセル併用療法は?

一足早く公表されたCheckMate-816試験に続き、IIIA期局所進行非小細胞肺がん患者さんを対象に術前ニボルマブ+カルボプラチン+パクリタキセル併用療法の有効性を検証する第II相NADIM試験の結果が公表されていました。 第II相試験のため、主要評価項目は生存…

・造血因子製剤の進歩

肺がん診療ばかりをしているとどうしても知識が偏りがちになりますが、当たり前のことながらほかの分野でも日々臨床医学は進歩しています。 思えば、すっかりがん薬物療法の一分野を築いた感のある免疫チェックポイント阻害薬ですが、その嚆矢となったニボル…

・各種ドライバー遺伝子異常に対する免疫チェックポイント阻害薬の効果

対象患者数が少ないのが難点だが、さまざまなドライバー遺伝子異常陽性肺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の効果について扱われた報告が2022年ASCO年次総会のポスター発表に含まれていました。 要約の背景にあるように、一般にはEGFR遺伝子変異やALK…

・KRAS遺伝子変異陽性肺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の使い方

先だってある先生から、 「KRAS G12C遺伝子変異陽性、PD-L1 高発現(少なくとも50%以上)の切除不能非小細胞肺がんの高齢患者さんがいるんだけど、初回治療はソトラシブと免疫チェックポイント阻害薬のどっちがいいんだろう?」 と相談を受けました。 その時…

・PD-L1≧50%の進行非小細胞肺がん患者さんにはどんな治療が望ましいか

ASCO2022の演題要約より。 65歳未満、喫煙歴なしのPD-L1≧50%の進行非小細胞肺がん患者さんには、Chemo-IOを積極的に勧めるのが良さそうです。 Outcomes of anti–PD-(L)1 therapy with or without chemotherapy (chemo) for first-line (1L) treatment of adv…

・DWIBS-MRI、やってみた

以下の記事で取り上げたDWIBS-MRI、入院中の肺がん患者さんの同意を得て行ってみました。 oitahaiganpractice.hatenablog.com 2人とも骨折後のリハビリ目的で入院して来られ、EGFR遺伝子変異陽性の原発性肺腺がん患者さんという点が一致していました。 結論…

・術前化学免疫療法のCheckMate816試験について、論文抄読

企業のプレスリリースの段階で記事にして満足してしまっていたCheckMate-816試験ですが、切除可能非小細胞肺がんの術前治療としては初めて大規模ランダム化比較試験で統計学的有用性が示された点で、間違いなく肺がん治療の歴史の転換点です。 IIIA期非小細…

・腫瘍マーカー

RET融合遺伝子陽性肺がんの義父がセルペルカチニブを飲み始めてから、そろそろ5か月経過します。 起こった変化は、 ・過敏反応を合併し、セルペルカチニブを減量、プレドニゾロン内服開始 ・過敏反応が改善してからセルペルカチニブ漸増、プレドニゾロン漸減…

・DWIBS法による全身MRI検査・・・FDG-PET検査に代わる存在となり得るか?

FDG-PET検査が普及して、肺がん患者さんの遠隔転移検索は随分とシンプルになりました。 FDG-PET検査以前は、胸腹部造影CT、頭部造影MRIもしくはCT、骨シンチグラフィーが必須検査で、検査枠の確保に苦労したものです。また、これだけ検査をしても胃腸の病変…

・外来診察中の小噺

悟りました。 ブログタイトルに沿った話をずっと続けるのは、私には無理なようです。 ときどき肺がんとは関係のない話題でつなぐことにしました。 褒められた話ではないのですが、私の外来診療は時間がかかります。 いつも知恵を絞って予約を組んでいるもの…

・巨大髄膜種と重症肺化膿症

世間はCoVID-19による行動制限なしの、久しぶりの大型連休初日です。 私はといえば、朝な夕なに入院担当患者さんがお亡くなりになり、哀しい連休初日になりました。 重症肺炎で人工呼吸管理中の超高齢患者さんを抱えているので、もとより今年の大型連休はな…

・「PRiME-R」と電子カルテ入力支援システム「CyberOncology」

以前、電子カルテ内に蓄積されたデータをリアルワールドデータ(RWD=実地診療データ)として利用するための仕組みのひとつとして、国立がん研究センター中央病院で「Double Jump」というシステムの開発が進んでいると書いたことがあります。 oitahaiganprac…

・NTRK融合遺伝子陽性肺がんに対するエヌトレクチニブ

NTRK融合遺伝子陽性がんに対するエヌトレクチニブについて、きちんとした記事を残していなかったことに最近気付きました。 備忘録として論文要約を書き残しておきます。 極めてまれな遺伝子異常ではありますが、見つかれば一発逆転もあり得ます。 Entrectini…

・直近1年間の振り返り・・・第62回日本呼吸器学会総会より

2022年、第62回日本呼吸器学会総会の内容を、暇を見つけてオンライン参加して閲覧していました。 腫瘍部会の年次集会において、この1年の出来事の振り返りと題した発表がありましたので、ざっと触れておきます。 ・ADAURA試験 IB-IIIA期のEGFR遺伝子変異陽性…