・CROWN試験の後治療

 進行ALK肺がんに対するローラチニブ初回治療の有効性を検証した第III相CROWN試験。

 病勢進行後の後治療の効果はどうか、という報告がありました。

 そもそも、評価時点でローラチニブを継続使用している患者さんが全体の6割以上に上るとのことで、後治療について云々する時期はまだ来ていないのかもしれません。

 要約だけを読んでもよく分かりませんが、ローラチニブを使用している患者さんの追跡期間中央値は既報と併せて考えると約3年に到達していると思います。その上でPFS2中央値未到達、95%信頼区間も未到達というのはおそるべしです。

 

 

Progression-free survival with subsequent anticancer therapies from a phase 3 trial of lorlatinib in treatment-naive patients (pts) with ALK+ advanced non–small cell lung cancer (NSCLC).

 

Benjamin J. Solomon et al.

ASCO2022 abst.#9069

DOI:10.1200/JCO.2022.40.16_suppl.9069

 

背景:

 ローラチニブは中枢神経系への移行に優れる第III世代ALKチロシンキナーゼ阻害薬で、治療歴のないALK融合遺伝子陽性進行非小細胞肺がん患者を対象とした第III相CROWN試験において、クリゾチニブと比べて統計学的有意かつ臨床的に意義のある無増悪生存期間延長を達成した。今回の調査ではCROWN試験において、ローラチニブやクリゾチニブ投与後病勢進行に至った際の後治療の効果について調べた。

 

方法:

 対象患者はL群(ローラチニブ100mg/日内服)とC群(クリゾチニブ250mg/回を1日2回内服)に1:1の割合で無作為に割り付けられた。主要評価項目は独立委員会評価による無増悪生存期間で、副次評価項目にはPFS2(ランダム化された日から1レジメン目の後治療後に病勢進行に至った日もしくは患者が死亡した日まで)を含んでいた。

 

結果:

 2021年9月20日までに、L群149人中91人(61.1%)とC群147人中12人(8.2%)がそれぞれのプロトコール治療を継続していた。L群の149人中33人(22.1%)が、C群の147人中103人(70.1%)が1レジメン以上の後治療を受けていた。後治療を受けた患者のほとんどが後治療1レジメン目としてALK阻害薬を使用していた(L群の63.6%、C群の93.2%)。一方、後治療1レジメン目として化学療法を受けた患者は、L群の36.3%、C群の2.9%だった。後治療1レジメン目の治療継続期間中央値は、L群で9.6ヶ月(四分位間2.9-18.1)、C群で13.3ヶ月(四分位間4.9-21.2)だった。PFS2中央値はL群で未到達(95%信頼区間は未到達-未到達)、C群で39.6ヶ月(95%信頼区間27.4-未到達)、ハザード比は0.45(95%信頼区間0.30-0.67)だった。

 

結論:

 病勢進行後の後治療は両群とも臨床的に有益だったが、PFS2の結果からもローラチニブの優越性が示唆された。

 

 

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 進行ALK肺がんに対する一次治療として、クリゾチニブに対するローラチニブの優越性を示したCROWN試験についてまとめています。

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 ALK阻害薬、果たして次のプレイヤーが実臨床に出てくるのはいつになるでしょうか。

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