・PD-L1≧50%の進行非小細胞肺がん患者さんにはどんな治療が望ましいか

 

 ASCO2022の演題要約より。

 65歳未満、喫煙歴なしのPD-L1≧50%の進行非小細胞肺がん患者さんには、Chemo-IOを積極的に勧めるのが良さそうです。

 

 

Outcomes of anti–PD-(L)1 therapy with or without chemotherapy (chemo) for first-line (1L) treatment of advanced non–small cell lung cancer (NSCLC) with PD-L1 score ≥ 50%: FDA pooled analysis.

 

Oladimeji Akinboro et al.

ASCO annual meeting 2022, abst.#9000

DOI:10.1200/JCO.2022.40.16_suppl.9000

 

背景:

 PD-L1高発現(PD-L1スコア≧50%)の進行非小細胞肺がんに対し、米国食品医薬品局が承認した1次治療には、免疫チェックポイント阻害薬±化学療法(±血管増殖因子阻害薬)が含まれるが、この患者集団に対して免疫チェックポイント阻害薬に化学療法を上乗せすることにより有効性が高まるかどうかははっきりしていない。

 

方法:

 進行非小細胞肺がんに対する1次治療として抗PD-1抗体 / 抗PD-L1抗体±化学療法を検証する目的で行われた12の無作為化比較試験のデータを統合し解析した。PD-L1スコアは腫瘍細胞のうち検査で染まったものの割合と定義し、今回の解析はPD-L1スコア≧50%の患者を対象として、全生存期間、無増悪生存期間、奏効割合を免疫チェックポイント阻害薬+化学療法(Chemo-IO)群と免疫チェックポイント阻害薬単独(IO-alone)群で比較した。生存解析の中央値はカプランマイヤー法を用いて推計した。ハザード比は層別化因子を各臨床試験として、コックス比例ハザードモデルを用いて推計した。オッズ比は各臨床試験を変数として、ロジスティック回帰分析を用いて推計した。全ての解析で年齢、性別、ECOG-PS、組織型、喫煙歴の背景因子を調整した。

 

結果:

 3,189人の患者が解析対象となった。65-74歳の患者層は38%、75歳以上の患者層は11%だった。69%は男性だった。80%は白人だった。66%はECOG-PS≧1だった。89%は喫煙経験者だった。Chemo-IO群は455人、IO-alone群は1,298人で、生存期間中央値はChemo-IO群で25.0ヶ月、IO-alone群で20.9ヶ月、ハザード比0.82(95%信頼区間0.62-1.08)だった。無増悪生存期間中央値はChemo-IO群で9.6ヶ月、IO-alone群で7.1ヶ月だった(ハザード比0.69、95%信頼区間0.55-0.87)。奏効割合はChemo-IO群で高かった(Chemo-IO群61% vs IO-alone群43%、オッズ比1.2、95%信頼区間1.1-1.3)。

 

結論:

 今回の探索的、仮説設定目的の統合解析では、進行非小細胞肺がんでPD-L1スコア≧50%の患者サブグループでは、Chemo-IO療法はIO単独療法と比較して同等かそれ以上の全生存期間、無増悪生存期間の結果を残した。75歳以上の患者集団では、Chemo-IO療法はIO単独群と比較して予後を改善しなかった。免疫チェックポイント阻害薬に化学療法を上乗せすることでの潜在的利益やリスクを患者の忍容性に関わる背景因子をもとに天秤にかけて、治療方針を患者とともに策定することが肝要である。