現在の職場に電子カルテが導入されて、随分経過しました。
現在システム更新作業のただなかにあります。
所感を少し。
手書きのお手紙が電子メール、SNSに切り替わるように、紙カルテが電子カルテに切り替わるのも、時代の要請であることは間違いありません。
電子カルテが導入されて、情報共有が容易になり、院内のどこにいても患者情報にアクセスできて、記録や発注、指示ができます。
一方で、時間の経過とともにシステムに負荷がかかり、齟齬を来すことが多くなります。
システムがダウンしたら病院機能の大半がストップしてしまいます。
以前の職場ではしばしばそうしたことが起こり、診療の現場が混乱していました。
数年前の臨床腫瘍学会総会で、その日の一通りの発表が終わった後に、ひっそりとイブニングセミナーで電子カルテにまつわる話題が提供されていました。
国立がん研究センター中央病院において、PwCが開発した"Double Jump"の電子カルテシステム導入が検討されていたそうです。
https://www.pwc.com/us/en/industries/health-industries/library/doublejump.html
既に米国のhigh volume centerには導入実績があるとのこと。
話を聞く限り、インターネット環境へのオープンアクセスが前提で、ログインする職員のセキュリティーをしっかり管理して、安全性を確保しているとのことでした。
オープンアクセスであるがゆえに、本システムを導入している複数の施設のデータを集約することが可能で、かなり簡単なプロセスで(個人情報をマスクした上での)患者背景、臨床経過、各種検査データ、生命予後を各端末にて集計・表示できるとのことでした。
例えば、NTRK陽性肺がん患者さんのデータを複数の施設のデータベースからリアルタイムに抽出して、生命予後を含めた各種データを抽出できる、ということを動画で示していました。
臨床の現場で悪戦苦闘する医療スタッフが、統合された臨床データにアクセスしやすくなる、という点で、アイデアとしてはずっと以前からあったのだと思いますが、それを実現したということでとても画期的なシステムです。
ただ、日本の風土に合うかどうかは別問題で、既にインターネットを介した電子カルテ管理が受け入れられている米国だからこそ成立するスキームのような気がします。
基本的にクローズド環境が前提の我が国の電子カルテでは、こうした多施設を連結するようなシステムは普及しづらいでしょう。
一方、国立がん研究センター同士の連結や、国立病院機構同士の連結など、母体を同じくする病院群での一括導入には有効かもしれません。
同じコンセプトで、我が国の電子カルテシステムのトップランナーである富士通がシステム開発をして導入した方が、早くゴールにたどり着ける気がします。