2019-01-01から1年間の記事一覧

・NEOSTAR試験:術前ニボルマブ±イピリムマブからの根治切除

2019年日本臨床腫瘍学会が京都で開催されており、私も参加しています。 見聞録は後に記載しますが、まずは京都アニメーション社屋の火災で犠牲になった(現時点で)33人の方々にお悔やみを申し上げます。 悪性腫瘍と戦う患者さんを少しでも支えたいと皆が集…

LCMC3試験:術前アテゾリズマブ+根治切除+術後化学療法

ASCO 2019 Abst. #8503 Neoadjuvant Atezolizumab in Resectable Non-Small Cell Lung Cancer(NSCLC): Interim Analysis and Biomarker Data From a Multicenter Study (LCMC3) ・LCMC3は切除可能なIB期、II期、IIIA期、一部のIIIB期の未治療非小細胞肺癌患…

ハートに火をつけて・・・悪性胸膜中皮腫とCAR-T療法・免疫チェックポイント阻害薬

免疫チェックポイント阻害薬が効きにくい"cold tumor"をCAR-T療法の力を借りて"hot tumor"にする・・・。 CAR-Tが火をつけるわけですね。 ASCO 2019 Abst.#2511 Regional delivery of mesothelin-targeted CAR T cells for pleural cancers: safety and prel…

・Best of ASCO Japan 2019より AMG510...KRAS G12C阻害薬

KRASといえば、免疫チェックポイント阻害薬の効果予測因子の一つです(と私は勝手に考えています)。 記事としては見つけられませんでしたが、ニボルマブの効果予測因子としてKRAS遺伝子変異が役に立つとの報告を何かの研究会で聞いたことがあります。 今回…

・Best of ASCO Japan 2019より  がん免疫の抑制/逃避のメカニズムを理解する

Best of ASCO Japan 2019に参加したときのメモです。 興味がある方はどうぞご覧ください。 LAG-3やTIGITを標的とした治療薬は、すでに開発されつつありますね。 〇免疫チェックポイントの標的分子がさまざまある中で、なぜCD28は開発対象から外れたのか ・CD…

インドネシアでの肺がん診療

2019年 日本呼吸器内視鏡学会総会 最近の学会では、アジアの先生方をお招きして講演をして頂く機会が増えている。 今回はインドネシアの先生からのご発表。 以前日本でも研修をされて、現在はインドネシアの医療を前に進めるために奮闘しておられるとのこと…

ASCO 2019 review トップ会談

2019/06/21のウェブ講演会。 肺癌領域では巨頭として知られる大阪の先生と和歌山の先生がASCO2019の話題について談義を繰り広げていた。 司会をして若手にしゃべらせる、というわけではなく、巨頭同士がトピックスについて簡単にまとめて、あとは思い付きの…

次世代シーケンサー時代の肺生検に求められるもの

2019年 日本呼吸器内視鏡学会総会 <肺癌診療に求められる検査/検体取り扱いについて> ・提出検体に占める腫瘍細胞の割合は30%以上が求められる ・2019/06/01に承認された遺伝子診断パネル 1)Oncomine 保険点数は11,700点=自由診療なら117,000円 用途はコ…

RepotrectinibとROS1肺癌

出典不明。 ASCO2019だったかしら。 repotrectinibは次世代型のチロシンキナーゼ阻害薬で、ROS1、TRK、ALK各融合遺伝子に対して選択性を持つように創薬された。前臨床試験において、repotrectinibはとりわけROS1融合遺伝子耐性変異(G2032Rを含む)に対する…

ロボット気管支鏡

2019年 日本呼吸器内視鏡学会総会 <Use of Robotic Bronchoscopy to diagnose solitary pulmonary nodules> オーストラリアの先生がご発表。 もはや、経気管支肺生検は、気管支鏡を握らなくてもできるところまで来つつある。 学会から帰ってきてHPを覗いて…

2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録その12 アファチニブ関連の発表

2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録 <EGFR遺伝子変異陽性の高齢者肺癌に対するアファチニブ療法の第III相試験(埼玉)> ・アファチニブ30mg/日を開始容量とした ・主要評価項目は無増悪生存期間、副次評価項目は奏効割合と全生存期間とした ・適格基準は …

2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録その11 オシメルチニブ使用成績調査

2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録 <オシメルチニブ市販後使用成績調査> ・予定された対象患者数は3,000人 ・2nd line以降(EGFR遺伝子変異阻害薬による一次治療→病勢進行→その後の再生検でT790M陽性となった患者)の患者データ ・患者集積期間は1年間 ・…

2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録その10 ドライバー遺伝子陽性肺癌

2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録 ・とにかくドライバー遺伝子変異検索にはやたらと手がかかる EGFR遺伝子変異 realtime PCR 要プレパラート5枚 ALK融合遺伝子 FISH or 免疫染色 要プレパラート3枚+4枚 ROS1融合遺伝子 RT-PCR 要プレパラート5枚 BRAF遺伝…

2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録その9 呼吸器病理医の現状と問題点

2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録 ゲノム医療の話題が多い今日この頃だが、そもそも肺癌という診断は、病理診断に基づいている。 病理医の先生がいないと、我々の診療は入り口にすら立てないのだ。 全国の病理医の先生にお願いしたアンケート調査の結果か…

2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録その8 日本呼吸器学会将来計画委員会

2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録 肺がん診療と直接関係ないけど、「がん診療のきんてん化」を考える上では重要な話。 <将来計画委員会の目標> ・学会員、専門医を増やす ・男女共同参画社会を目指す ・労働環境の是正に寄与する <他学会と比較> ・会…

2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録その7 EGFR遺伝子変異とPD-L1の関係

2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録 International Poster Discussionという、企業ブースの片隅のような会場でひっそりと行われたセッションだった。 しかし、台湾から来日されていた先生のご発表は、とても示唆に富むものだった。 The Impact of Pre-treatm…

2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録その7 初回ICI-combo-therapy時代の治療戦略

2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録 免疫チェックポイント阻害薬と抗がん薬併用療法の展望 ・KEYNOTE-001 study Garon et al. NEJM n=1,235のphase I studyということ自体が、大きなパラダイムシフトだった phase Iの経過を見つつ、有望な治療群には追加の患…

2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録その6 お年寄りへの免疫チェックポイント阻害薬

2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録 今度はお年寄りへの免疫チェックポイント阻害薬の話題、岡山から。 ・75歳以上の患者へ免疫チェックポイント阻害薬を投与した場合のデータは不十分 ・G8、VES-13でスクリーニング ・2015年12月から2017年12月までの期間に…

2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録その5 特発性間質性肺炎合併患者へのニボルマブ

2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録 日常業務が多忙すぎて、記事が思いっきり周回遅れになってしまった。 学会出張で地元を抜け出したのをいいことに、学会中の手書きノートを頼りに記事を書き残す。 走り書きなので、もはや誰の発表なのかも分からないのが…

・JIPANG試験・・・術後補助化学療法としてペメトレキセドの出番はあるのか

おそらく、抗がん薬のみの術後薬物療法のエビデンスとしても、ペメトレキセドそのものの効果に関連した臨床試験としても、これが最後の報告となるのではないでしょうか。 治療標的となるドライバー遺伝子変異のない患者さんに対する治療開発の趨勢は、もはや…

ASCO 2019...KEYNOTE-001 非小細胞肺癌サブセットの5年間追跡データ

今夜は涼しいし、いつものルーチン業務が早く終わった。 当直業務もひと段落したので、メールでやってきたASCO 2019の話題を書き残す。 ペンブロリズマブの長期経過観察データが出てきた。 第I相試験でありながら、参加者総数は550人と第III相試験並み。 細…

網羅的遺伝子解析のFoundation One CDxとOncoGuide NCC、いよいよ実地臨床へ

2019/05/29の厚労省中医協の会議において、Foundation One CDxとOncoGuide NCCの保険償還が認可された。 2019/06/01から実地臨床で施行可能になるとのことで、NHKの朝のニュースでも「がんゲノム医療」として取り上げられていた。 がん遺伝子の異常を検出し…

高齢者進行非扁平上皮非小細胞肺癌に対する初回治療、カルボプラチン+ペメトレキセドも可?

ここ1年くらい、私事に追われてなかなか筆が進まない。 6月に入ったらようやく一区切りつきそうなので、たまった話題を書き留めておかないと失われてしまいそうと、焦っている。 ・・・といいながら、今年のASCOの話題を眺めたりしている。 特定の遺伝子変異…

非小細胞肺がん患者の治療選択における意識調査

ベーリンガー・インゲルハイム社から、標記の件についてのプレスリリースが行われた。 以下のリンクを参照。 https://www.boehringer-ingelheim.jp/press-release/20190509_01 同社が製造・販売している薬のラインナップを考えるとやむを得ないことではある…

脳転移の治療、四方山話

令和元年、あけましておめでとうございます。 最初は棚上げにしていたこの話題で。 進行肺がんの患者において、脳転移をはじめとした中枢神経系転移の症状コントロールがうまく行かず、治療が行き詰ってしまうことはよくあることです。 脳転移は、発症の仕方…

PROCLAIM試験 シスプラチン+ペメトレキセド併用化学放射線療法は「あり」か?

前回の記事で、MS58発表後の質疑応答で取り上げられたPROCLAIM試験。 改めて見てみると、試験自体は早期無効中止となっている。 「これ以上臨床試験を続けても、患者にとっての利益にならないので、途中で切り上げましょう」 ということで早期無効中止となっ…

2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録その4 デュルバルマブが使える患者は?

2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録 以前、ベバシズマブが登場したときにもこんな話題があった。 薬が使えるようになったのはいいけれど、果たしてどのくらいの患者が治療対象となるのか。 今回は、局所進行非小細胞肺癌に対してプラチナ併用化学放射線療法…

2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録その3 EGFR阻害薬再投与の是非

2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録 日本全国津々浦々、それぞれの地方で肺がんの臨床研究グループが活動している。 中部・東海地方は、基礎研究、薬物療法、内視鏡検査・治療の臨床と研究に長けているイメージ。 今回の学会に参加して初めて知ったのだが、…

子宮頸がんとPembrolizumab

本ブログの趣旨とは異なるが、最近GOPC-ROS1融合遺伝子陽性の子宮頸部混合型小細胞癌(この病名記載が適切かどうかはわからないけれど)の患者さんから相談を受けた。 どんな治療が可能性として挙げられるか、とのこと。 小細胞癌に対する化学療法は術後補助…

2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録その2

2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録 初回EGFR-TKI治療後、再生検をして、結果がどうだったかという後方視的検討・・・。 やむを得ないことだが、FLAURA試験の結果を受けて、ほとんどの臨床医がEGFR遺伝子変異陽性肺がんの初回治療としてオシメルチニブを選ん…