2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録その5 特発性間質性肺炎合併患者へのニボルマブ

2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録

 日常業務が多忙すぎて、記事が思いっきり周回遅れになってしまった。

 学会出張で地元を抜け出したのをいいことに、学会中の手書きノートを頼りに記事を書き残す。

 走り書きなので、もはや誰の発表なのかも分からないのがつらい。

 もっとも、この内容はすでに論文化されている。

 

Nivolumab for advanced non-small cell lung cancer patients with mild idiopathic interstitial pneumonia: A multicenter, open-label single-arm phase II trial.

Lung Cancer. 2019 Jun 3. pii: S0169-5002(19)30494-5. doi: 10.1016/j.lungcan.2019.06.001. [Epub ahead of print]

Fujimoto, Yomota, Sekine et al.

背景:

 非小細胞肺癌に対するニボルマブの効果は既に実証済みである。しかし、ニボルマブに関連した薬剤性肺臓炎は比較的頻度が高く、致命的になりうる有害事象である。特発性間質性肺炎を合併した患者は薬剤性肺臓炎を合併するリスクが高いと考えられており、一般に臨床試験の対象からは除外されている。加えて、今日に至るまで、特発性間質性肺炎を合併した既治療非小細胞肺癌患者に対する多施設共同前向き臨床試験は行われていない。こうしたアンメット・メディカル・ニード(解決されていない医療上の需要・問題)に対応する目的で、マイルドな特発性間質性肺炎を合併した非小細胞肺癌患者に対するニボルマブの有効性・安全性を評価する、多施設共同オープンラベル単アーム第II相試験を企画した。

対象と方法:

 既治療、手術不能、マイルドな特発性間質性肺炎を合併した非小細胞肺癌患者を対象とした。マイルドな特発性間質性肺炎とは即ち、予測肺活量(%VC)が80%以上で、胸部のHRCTにおいてpossible UIPパターン、もしくはinconsistent with UIPパターンを示すものとした。主要評価項目は6ヶ月無増悪生存割合で、副次評価項目は本治療による安全性とした。

結果:

 18人の患者が参加した。6ヶ月無増悪生存割合は56%で、奏効割合は39%、病勢コントロール割合は72%だった。治療関連死は認めなかった。薬剤性のGrade 3/4の有害事象を1件(末梢神経障害)認めた。Grade 2の薬剤性肺臓炎を2人の患者が起こしたが、副腎皮質ステロイドの投与で改善した。

結論:

 マイルドな特発性間質性肺炎を合併した患者においても、ニボルマブは有効な治療となりうる。

 

 その他、学会で話されていたことを肉付けすると・・・

膠原病関連間質性肺炎の患者は除外した

・治療開始前にステロイドや免疫抑制薬を使用していた患者は除外した

・平均年齢は71.5歳

・男性が17人(女性は1人だけ)

・対象となった患者全員が喫煙者

・PS 0が4人、PS 11が14人

・腺癌12人、扁平上皮癌4人、その他の非小細胞肺癌2人

・possible UIP 15人、inconsistent with UIP 3人

・%VCの平均値は92.2%

・薬剤性肺臓炎を合併した患者、1人は治療開始から25日後に、もう1人は35日後に発症

・1人目は薬剤性肺臓炎発症後にPSLを投与、8週間で中止、その後、ニボルマブ投与21ヵ月後でも部分奏効の状態を維持している

・2人目はPSLで治療し、薬剤性肺臓炎は軽快した(が、その後の詳細はよくわからず)

 個人的な印象として・・・

・薬剤性肺臓炎発症後の追跡期間は4週間まで、とのことだったが、果たしてこれで十分なんだろうか

ニボルマブの特性を考えると、6ヶ月無増悪生存割合というのは主要評価項目として適切なんだろうか

・できれば長期追跡調査の結果を見てみたい