2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録その3 EGFR阻害薬再投与の是非

2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録

 日本全国津々浦々、それぞれの地方で肺がんの臨床研究グループが活動している。

 中部・東海地方は、基礎研究、薬物療法内視鏡検査・治療の臨床と研究に長けているイメージ。

 今回の学会に参加して初めて知ったのだが、中部・東海地方では大規模な患者登録システムが稼動しているようで、そこから派生した研究報告がいくつか取り扱われていた。

 今回の内容はそのひとつ。

 EGFR阻害薬を使用して、何らかの理由で使えなくなり、再投与したらどんなだろう、という内容だった。

 EGFR阻害薬の黎明期からこうした発表はいくつもあったが、これだけEGFR阻害薬の選択肢が増えると、おのずと論調も変わってくる。

 間質性肺炎の毒性で使用できなくなったら再投与は難しいだろうが、例えば発疹とか、爪周囲炎とか、下痢とか、肝機能障害で継続不能になったときに、他のEGFR阻害薬に変えるのはよくある話だ。 

 そうした実地臨床にきちんとした裏づけを与える、という意味で、今回の発表は意義深い。

 また、病勢進行後の再投与であっても、治療成功期間が3-5ヶ月程度稼げるのなら、それはそれで意義がある。

 殺細胞性抗腫瘍薬の「再」投与よりは、EGFR阻害薬の再投与の方が気が利いている。

○MS49 EGFR阻害薬のrechallengeを行った541例の検討

・中部、東海地域の11拠点において、2008年から2018年にEGFR阻害薬を投与された1,400人を対象に、病勢進行後にEGFR-TKIの再投与を受けた患者をretrospectiveに検討した

・再投与を受けたのは570人で、そのうち541人を解析対象とした

・再投与を受けた患者全体の治療成功期間(Time to Treatment Failure, TTF)は6.0ヶ月だった

・初回治療時のEGFR-TKIが有害事象で中止された場合のTTFは、病勢増悪で中止された場合のTTFよりも有意に長かった