・NEOSTAR試験:術前ニボルマブ±イピリムマブからの根治切除

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 2019年日本臨床腫瘍学会が京都で開催されており、私も参加しています。

 見聞録は後に記載しますが、まずは京都アニメーション社屋の火災で犠牲になった(現時点で)33人の方々にお悔やみを申し上げます。

 悪性腫瘍と戦う患者さんを少しでも支えたいと皆が集まって真剣に議論している同じ地域で、同じときに、短時間で多くの方々の命が失われたことはとても辛いことです。

 

 今回とりあげるNEOSTAR試験では、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法が主要評価項目を達成したにも拘らず、その後の開発は続けないという決断がなされたようです。

 どんな事情があったのでしょうか。

 これが医師主導臨床試験なら、余程の事情がなければ臨床試験立案者は納得しないことでしょう。

 

 

 

ASCO annual meeting 2019

Abst. #8504

Neoadjuvant nivolumab(N) or nivolumab plus ipilimumab(NI) for resectable non-small cell lung cancer(NSCLC): clinical and correlative results from the NEOSTAR study

 

・術前化学療法により、切除後病巣に占める腫瘍細胞の割合が10%以下であること(major pathologic response)が、術前化学療法の効果を測る上での有用な代替エンドポイントであることが知られている

→Pataer A et al., J Thorac Oncol 2012

・免疫チェックポイント阻害薬の術前療法によるMPR患者の割合は、単剤であれば22-45%、化学療法との併用であれば50-83%程度見込めることが知られている

→Forde P et al., N Engl J Med 2018

Oezkan F et al., ASCO-SITC 2019

Provencio M et al., ASCO 2019

Shu C et al., ASCO 2018

・I-IIIA期の非小細胞肺癌患者を対象に、ニボルマブ単剤療法群(N)とニボルマブ+イピリムマブ併用療法群(NI)に1:1の割合で無作為に割り付けた

・3コースの治療施行後に手術を行った

・手術後は、標準的な治療(必要に応じて術後補助化学療法)を行った

・主要評価項目はMPRとなった患者の割合とした

・第II相試験のデザインとし、22人集積して6人以上がMPRを達成(MPR割合≧27.3%)していたら有効と判定することにした

・44人を集積し、N群に23人、NI群に21人が割り付けられた

プロトコール治療を完遂したのは全体44人のうち41人(93%)、N群23人のうち22人(96%)、NI群21人のうち19人(90%)だった

・手術ができたのは全体44人のうち39人(89%)、N群23人のうち22人(96%)NI群21人のうち17人(81%)だった

・術後にプラチナ併用術後補助化学療法を受けたのは、全体44人のうち22人(50%)、N群23人のうち13人(57%)、NI群21人のうち9人(43%)だった

・術後に補助放射線療法を受けたのは、全体44人のうち9人(20%)、N群23人のうち3人(13%)、NI群21人のうち6人(29%)だった

・MPR割合は、全体で25%、N群の17%、NI群の33%で、NI群では主要評価項目を達成した

・NI群では、CD3陽性の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)が増加した

・NI群では、メモリーT細胞(CD8+/CD103+, CD4+/CD28+)が増加した

・だけど、なぜかNI群の開発は2018年12月時点で中止された

・現在進行中の術前免疫チェックポイント阻害薬関連第III相臨床試験

 CheckMate-816試験:ニボルマブ+プラチナ併用化学療法

 KEYNOTE-617試験:ペンブロリズマブ+プラチナ併用化学療法

 Impower-030試験:アテゾリズマブ+プラチナ併用化学療法

 AEGEAN試験:デュルバルマブ+プラチナ併用化学療法

・免疫チェックポイント阻害薬が効かない遺伝子変異が報告されている(Abst. #102)

 STK-11 mutation

 LKB1 mutation

 KEAP1 mutation