・術前ニボルマブ+イピリムマブ併用療法・・・ランダム化第II相NEOSTAR試験のおさらい

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 切除可能非小細胞肺がん患者さんを対象に、ニボルマブ+イピリムマブ術前併用療法の有用性を検証した第II相NEOSTAR試験。

 

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 2019年の米国臨床腫瘍学会で取り上げられた際に一度触れましたが、論文化されていましたので改めて記事にします。

 進行非小細胞肺がんにおけるCheckMate-227試験やChackMate-9LA試験の結果を見ると、術前治療としてのニボルマブ+イピリムマブ併用療法やニボルマブ+イピリムマブ+プラチナ併用化学療法初期併用の治療開発も見てみたいところですが、いまのところはCheckMate-816試験の結果を受けて、ニボルマブ+プラチナ併用化学療法が術前標準治療と位置付けられることになりそうです。

 

 

Neoadjuvant nivolumab or nivolumab plus ipilimumab in operable non-small cell lung cancer: the phase 2 randomized NEOSTAR trial

 

Tina Cascone et al.
Nat Med. 2021 Mar;27(3):504-514. 
doi: 10.1038/s41591-020-01224-2.

 

 イピリムマブはニボルマブと併用することにより進行非小細胞肺がんの臨床的アウトカムを改善したが、切除可能非小細胞肺がんの免疫学的腫瘍微小環境に対してどのような効果や影響を及ぼすかははっきりしていない。今回我々は、切除可能非小細胞肺がん患者44人を対象に、術前治療としてニボルマブ単剤療法(N群)もしくはニボルマブ+イピリムマブ併用療法(NI群)の後に外科切除を行う第II相NEOSTAR試験の結果について報告する。主要評価項目はMajor Pathologic Response(MPR=切除病巣もしくは郭清リンパ節内に占める残存腫瘍細胞が10%以下と定義)割合とした。各治療群におけるMPR割合は、過去に行われた術前化学療法関連臨床試験で得られたデータを比較対象として統計学的解析を行った。NI群では事前に設定していた閾値MPR割合(6 / 21)を超える38%(8 / 21)のMPR割合を達成した。N群におけるMPR割合は22%(5 / 23)だった。臨床試験遂行中に外科切除できた患者37人のみを対象に絞ると、MPR割合はNI群50%(8 / 16)、N群24%(5 / 21)だった。N群と比較して、NI群では病理学的完全奏効(pCR)割合が高く(10% vs 38%)、残存腫瘍細胞が少なく(50% vs 9%)、腫瘍病巣内のeffector T細胞、tissue-resident memory T細胞(=組織内に移行後、循環系に戻らずそのまま長期間組織内に留まり続けるmemory T細胞)、effector memory T細胞が多かった。腸管内のRuminococcus属とAkkermansia属が多いことと、NI群の患者がMPRに至ることが相関していた。本試験のデータは、術前ニボルマブ+イピリムマブ併用療法が病理学的奏効割合、腫瘍免疫細胞浸潤や免疫学的記憶を高め、切除可能非小細胞肺がんにおける本治療の臨床開発を進めるメリットを示した。

 

・effector T細胞、effector memory T細胞について

第5回 活性化されたT細胞の機能的亜群とその運命 |JBスクエア 日本血液製剤機構 医療関係者向け情報 (jbpo.or.jp)

・tissue-resident memory T細胞について

The Japan Society for Clinical Immunology (jst.go.jp)

 

 

 関連記事です。

 切除可能非小細胞肺がんに対するニボルマブ+プラチナ併用化学療法、2022年03月に米国で術前治療として薬事承認されました。

 IMpower-010試験やKEYNOTE-091試験といった術後補助療法とどのように住み分けるのか、今後大きな議論が巻き起こりそうです。

 

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