以下のNEOSTAR試験の項で、腸管内のRuminococcus属とAkkermansia属の増加が治療有効性と相関があると触れました。
oitahaiganpractice.hatenablog.com
Ruminococcus?
Akkermansia?
私が従事する呼吸器内科という診療科は、日頃から肺炎患者さんを診療していて原因菌の特定に努力していますので、細菌の取り扱いには比較的意識の高い方だと自負しています。
それでも、今回話題になっている両菌は、通常の呼吸器診療をしていても全く馴染みのない菌です。
少しだけ調べてみました。
私なりの結論は、免疫チェックポイント阻害薬を使用するにあたっては、シイタケやなめこといったトレハロースを多く含む食品、ウナギやドジョウといった食品を食事に取り入れたらどうだろうということに落ち着きました。
結局のところ、旬の食材を取り入れた古典的な日本食がよいのでしょう。
がん薬物療法治療中、どんな食事をとればいいかという質問をしばしば受けるので、少しは根拠を以て答えられそうです。
1)Ruminococcus属
→理化学研究所HP: https://www.riken.jp/press/2020/20200422_1/index.html
・ルミノコッカス属は、草食動物の胃などに存在するグラム陽性菌の一属
・フィルミクテス門クロストリジウム目に属すが芽胞は形成しない
・セルロース分解能力を持ち、草食動物の胃などに生息する
・一般的に嫌気性で、培養には強い嫌気度を必要とする
・セルラーゼを有し、セルロースを分解してそれを栄養とするが、一部の菌はキシロース分解酵素は有さず、また、グルコースも取り入れることはできない
・トレハロースが豊富な環境下では、Ruminococcusが増殖し、CD8陽性制御性T細胞が誘導される可能性がある
・2011年に「Nature」で発表された報告では、ヒトの腸内細菌叢パターン(エンテロタイプ)は3種に大別される
Enterotypes of the human gut microbiome. Arumugam et al., Nature. 2011 May 12;473(7346):174-80.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3728647/
1) スウェーデン・日本人タイプ
スウェーデン人と日本人に多いエンテロタイプ。ビフィドバクテリウム属、ルミノコッカス属の比率が他のエンテロタイプに比べ多いのが特徴。スウェーデン、日本とも農業と漁業の盛んな国特有の長年の食習慣が「スウェーデン・日本人タイプ」の腸内細菌叢が形成された要因と推察できる。食生活から考えて、穀物を主食とし、海産物を多く食べる食習慣がこのようなエンテロタイプを形成したと考えられる
2)欧米タイプ
欧米人や中国人によく見られるエンテロタイプ。タンパク質や脂肪を多く摂取する食習慣をもつ人に特徴的なタイプ。バクテロイデス属の比率が高い
3)アフリカ・南米タイプ
中南米やアフリカ大陸に住む人に多いエンテロタイプ。穀物を主食にしている人に多くみられる。プレボテラ属が多い
2)Akkermansia属
→ヤクルト中央研究所「菌の図鑑」
・アッケルマンシア属(Akkermansia)は、偏性嫌気性グラム陰性細菌の属である
・幅広い脊椎動物の消化器官に分布する
・2004年、オランダのムリエル・デリエンは健康なヒトの糞便から細菌を分離し、オランダの著名な微生物生態学者の名前(アントーン・アッカーマンス)から、アッカーマンシア・ムシニフィラと名づけた
・生後まもない乳児の糞便中に検出され、6か月齢では約7割の乳児が保菌するようになり、1歳では保菌率が成人と同レベルの9割に達する
・成人の腸内細菌の総数の1〜4%を占め、腸内に大量に棲息する菌の一種
・体重、肥満度指数(Body Mass Index:BMI)、血中コレステロール値、空腹時血糖値が高いヒトでは、正常なヒトに比べて、腸内のアッカーマンシア・ムシニフィラが少ないとされる
関連記事です。
がん治療と食事、がん治療と歯周病の話題は、以前も取り上げたことがあります。
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