小児がんのため、10歳で亡くなった患者さんの作品です。
ある生命保険会社主催の展覧会に出品されていたもののようです。
数年前から、肺がん関連の学会・講演会でときおり引き合いに出されるようになりました。
なぜこうした作品が取り上げられるのかというと、
「抗がん薬治療で白血球が少なくなったら、感染リスクのある非加熱食品は食べない方がいい」
という神話があるからです。
確かに、治療中にお刺身やお鮨を食べて、そのせいで急性腸炎を起こして治療に難渋した患者さんを何度か経験しました。
私が初期研修を受けた大学病院では、抗がん薬治療中の患者さんのための「加熱ラップ食」なるものが存在し、患者さんの白血球が下がると上司の指示で食事を変更していました。
多分、治療中にお刺身を食べていいとか食べてはならないとかの二極論では処理できない問題なのではないでしょうか。
刺身を食べないよりも、食べた方が感染リスクは増えるに決まっています。
さばの刺身を食べる人は、アニサキス症のリスクを背負い込んでも食べたいから食べるのです。
生牡蠣を食べる人は、ノロウイルス感染のリスクを背負い込んでも食べたいから食べるのです。
個々の患者さんが、どれだけリスク管理に重点を置くのか、それに基づいて行動するのか、ということだと思います。
小児がんの治療は白血球が減る期間が長く続くし、基本は入院治療ですから、白血球減少の期間が限られていて、外来治療が基本の肺がん治療と同列には語れません。
だからこそ、小児科の先生も、生ものを食べていいよ、とは言えないのではないでしょうか。
そこを理解した上でこの作品を見つめなければなりません。