・抗がん薬治療中の植物との付き合い方

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 私も年を取ったのか、はたまた新型コロナウイルス感染症の流行により引きこもり生活が長くなったためか、植物と仲良くすることが多くなりました。

 小さな植木鉢を買ってきて、ヤマボウシやイロハモミジの種を拾ってきて植えて、小さな苗を日々可愛がっています。

 先年、子供が小さいころに縁日で手に入れた金魚が天に召された際、土葬してその上にヤマボウシの苗を移植しました。

 地植えをし、毎日水やりをし、手を合わせてお参りしたためかすくすくと育ち、今年は葉を落としてから初めて枝の剪定をしました。

 秋から冬にかけて、他のほとんどの苗も葉を落とし、果たして春が来たら葉をつけてくれるだろうかとやきもきしています。

 冒頭に掲げた写真は、そんな苗の中でただひとつ、まだ葉を残している鉢を撮影したものです。

 

 植物と接していると日々の時間軸とは異なる時の流れを感じることができ、癒されます。

 とはいえ、がん薬物療法で白血球減少を経験する患者さんの立場からすると、植物とはあまり仲良くしない方がいいようです。

 私が若いころは、入院中の患者さんをお見舞いする際の差し入れとして生花は定番でした。

 「病院に根が生えては困るから、お見舞いのときは切り花を」

という心得がありました。

 病院の入り口に花屋さんが軒を構えるくらいでしたが、最近は目にしなくなりました。

 むしろ、病院管理側から生花持ち込みをお断りする世の中になりました。

 

 さて、病院には生花はご法度、というこの話、果たして根拠はあるのでしょうか。

 調べたことがなかったのですが、ちょっと検索してみたらいくつか文献が引っかかっりました。

 どうも真菌感染を懸念してのことのようです。

 確かに、生花を持ちこんだことにより、侵襲性肺アスペルギルス症なんぞを合併してしまったら目も当てられません。

 高度、長期間の免疫抑制が前提の血液腫瘍領域では無視できない話です。

 血液腫瘍ほどに高度の免疫抑制は肺がん化学療法では陥りにくいが、気を付けるに越したことはないでしょう。

 

 

 

 

Antimicrobial Prophylaxis for Adult Patients With Cancer-Related Immunosuppression: ASCO and IDSA Clinical Practice Guideline Update | Journal of Clinical Oncology (ascopubs.org)

J Clin Oncol. 2018 Oct 20;36(30):3043-3054.

doi: 10.1200/JCO.18.00374. Epub 2018 Sep 4.

 

質問4:

 手指衛生、空気フィルター、好中球減少中の患者用に配慮された食事など、追加予防策を講じた場合には、そうでない場合、あるいは他の予防策を講じた場合に比べて好中球減少症患者の感染リスクを減らせるか?

 

推奨事項4.1.

 全ての医療従事者は、医療環境におけるエアロゾルや、直接・間接に患者に接触することを介した病原微生物の伝播リスクを減らすため、手指衛生、呼吸衛生/咳エチケットガイドラインに従うべきである。

 

推奨事項4.2.

 抗がん薬治療による好中球減少症を合併した外来患者は、空気中に浮遊している真菌胞子を高濃度に含むような環境(建設現場、解体工事現場、ガーデニングや土を掘る作業を通して土壌に密に触れること、家のリフォーム作業など)に長時間身を置くことは避けなければならない

 

 

 

Preventing fungal infections in immunocompromised patients

 

E Johnson et al., Br J Nurs. 2000 Sep 28-Oct 11;9(17):1154-6, 1158-64.

doi: 10.12968/bjon.2000.9.17.16236.

 

 免疫抑制状態にある患者の全身性真菌感染症は、この20年間(1980年以降ということでしょう)に増加傾向にある。骨髄移植を受ける患者、化学療法による好中球減少が遷延している患者は、とりわけ真菌や真菌胞子が存在する環境において最もリスクが高い。感染予防策としては、空気フィルターを使用すること、手指洗浄を徹底すること、身の回りに花やある種の食品を置かないこと、予防的抗真菌薬を使用することが挙げられる。・・・以下略。