・がん治療を続けながら入院リハビリをするということ

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 私の今の勤務先では月単位で入院リハビリができるので、呼吸器疾患を背景に持つ患者さんの入院リハビリ依頼が頻繁に持ち込まれます。

 前立腺がんや婦人科がんの化学療法の合間に1-2週間転院リハビリができないか、といったような依頼が来たこともありますが、流石にその短期間ではリハビリの効果が得られにくいですし、そもそもリハビリをしなければならないような状況なら、まずは化学療法を休止してリハビリに取り組むべきだと思いましたので、これらのご依頼はお断りしました。

 最近「難しいなあ」と感じるのは、高額な分子標的薬を使っている患者さんの入院リハビリ依頼を受けたときです。

 例えば、原発性肺がんに対して高額な分子標的薬を服用している患者さんが、尻もちをついて腰椎を圧迫骨折してしまった、とか。

 圧迫骨折は患者さんによっては強い痛みを伴い、それが治まるまでの1-1.5ヶ月程度は日常生活能力が大きく損なわれてしまうことがあります。

 そのため、入院療養をして、痛みが緩和してきたら少しずつリハビリを進めていき、2ヶ月程度で退院する、というのが一般的です。

 「難しいなあ」と感じるのは何かというと、リハビリ専門病棟では医療費の算定が包括算定、いわゆる「まるめ」算定のため、がんに対して使用している分子標的薬があまりに高額だと、病院が赤字になってしまう、ということです。

 一般病棟なら出来高算定なので、分子標的薬継続に必要な医療費はそのまま入院費に反映させることができますが、リハビリ専門病棟に比べると提供できるリハビリの質と量が随分制限されてしまいます。

 病院が赤字になってしまっては職員の雇用が維持できません。

 やむを得ず、リハビリ中も治療継続が必要な方には、一般病棟でできる範囲のリハビリしか提供できませんとお断りして、それでも良ければ、ということでお引き受けしています。

 せめて、がん治療関連の診療費だけでも別勘定にしてもらえると、より多くのがん患者さんに良質な入院リハビリを提供できるのですが・・・。

 

 

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