KRASといえば、免疫チェックポイント阻害薬の効果予測因子の一つです(と私は勝手に考えています)。
記事としては見つけられませんでしたが、ニボルマブの効果予測因子としてKRAS遺伝子変異が役に立つとの報告を何かの研究会で聞いたことがあります。
今回はKRASそのものをターゲットとした分子標的薬の話です。
過去の苦い経験を踏まえる(小規模臨床試験で有望でも、大規模臨床試験では有効性が確認できなかったという例は、枚挙にいとまがありません)と、大規模臨床試験の結果を見届けるまではコメントしがたいです。
また、KRASはドライバー遺伝子変異と言うよりも、多段階発癌の過程で出てくる多数の遺伝子変異のうちの一つ、という印象の方が個人的には強いです。
ASCO 2019 abst.#3003
Phase 1 Study Evaluating the Safety, Tolerability, Pharmacokinetics (PK) and Efficacy of AMG 510 , a Novel Small Molecule KRAS G 12 C Inhibitor, in Advanced Solid Tumors
・RASは古くから知られている発がん関連遺伝子異常だが、治療標的としての開発は困難とされてきた
例えば、KRAS遺伝子変異陽性者を対象としたSelumetinibの臨床試験はこんな感じ
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e646669.html
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e898929.html
・KRAS G12Cは非小細胞肺癌においては最も頻度の高いKRAS遺伝子変異で、肺癌患者の13%で認められるとされる
・がん全体の30%でRAS遺伝子変異を認める
・AMG510はGDP結合型KRASに会合する分子標的薬
・2018年に開始した第I相臨床試験が、早くもASCO 2019で報告された
・対象は標準治療をやりつくした進行固形癌の患者で、脳転移を有する患者は除外した
・第I相試験で、参加した患者は35人、うち14人が非小細胞肺癌、19人が結腸癌、残りは膵癌
・毒性は軽微で、用量制限毒性には至らなかった
・非小細胞肺癌では2人が奏効し、2人ともに濃厚な過去治療歴を有していた
・現時点で効果判定対象となった非小細胞肺癌患者10人のうち5人が奏効しており、奏効割合は50%
・まだほとんどの患者が治療を継続している
・肺癌の患者においては、低用量でも有効性が確認されている