2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録その2

2019年 第59回日本呼吸器学会備忘録

 初回EGFR-TKI治療後、再生検をして、結果がどうだったかという後方視的検討・・・。

 やむを得ないことだが、FLAURA試験の結果を受けて、ほとんどの臨床医がEGFR遺伝子変異陽性肺がんの初回治療としてオシメルチニブを選んでいるだろうと考えられる今、こうした発表は輝きを失っているように見える。

 特に、MS47の演者との質疑応答では、ガックリ来てしまった。

 

〇 MS47:EGFR陽性非小細胞肺がんのEGFR-TKI耐性後EGFR-T790M変異出現に関する多施設共同後方視的検討

・2014年05月から2018年01月までに、国内5施設でEGFR-TKI使用後に耐性化し、再生検が実施された78人を対象とした

・腫瘍最大縮小率maximal tumor shrinkage(MTS)と、T790M変異出現の関連性を調べた

・T790M陽性が39人、陰性が39人、T790M出現割合は50%だった

・T790M陽性群のMTS平均値は42.7%、T790M陰性郡のMTS平均値は24.0%で、p=0.023と有意にT790M陽性群の方が初回EGFR-TKI治療時の最大腫瘍縮小率が大きかった

・裏を返せば、初回治療がよく効くほど、T790M耐性変異が出やすく、二次治療でオシメルチニブを使うチャンスが多そうだった

・この発表は、初回治療でオシメルチニブ以外のEGFR-TKIを使用することを前提としているが、演者に「先生はEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌を診断したときに、どんな治療を勧めますか?」と質問したところ「患者の理解度にもよりますが、オシメルチニブを勧めます」との答えが返ってきて、ドン引きしてしまった

〇 MS48:当院におけるオシメルチニブ使用症例の後方視的検討

・2016年04月01日から2019年01月31日までの間にEGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺癌と診断され、EGFR-TKIを使用した患者113人を対象とした

・113人のうち、再生検をしたのが61人(54.0%)

・再生検をした61人のうち、T790M陽性と判定されたのが37人(60.7%)

・患者背景は以下の通り

・median Time to Treatment Failure(mTTF)は417日間

・肝転移があると、TTFが有意に短くなる傾向があった

・脳転移があっても、TTFに有意差は出なかった

・胸水があっても、TTFに有意差は出なかった

・骨転移があっても、TTFに有意差は出なかった

・遺伝子変異タイプ別では、TTFに有意差は出なかった