ROS1陽性非小細胞肺癌に対するEntrectinib

 entrectinibとROS1について。

 entrectinibが標的としているROS1, TRKsはいずれも出現頻度の低い遺伝子異常だ。

 そのため、一般社会へのインパクトは弱いかもしれないが、こうした遺伝子異常をもつがんに苦しめられている方にとっては、まさに福音といってよい。

 

<ROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺癌に選択的ROS1、TRKA/B/C阻害薬のentrectinibが有望【WCLC2018】>

 entrectinibのフェーズ1/2試験の統合解析の結果、局所進行または転移を有するROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺癌に、選択的ROS1、TRKA/B/C阻害薬であるentrectinibが有望であることが明らかとなった。IASLC 19th World conference on Lung Cancer(WCLC2018)で発表された。

 STARTRK-2試験は、多施設フェーズ2試験のバスケット試験で、entrectinibは4週間を1サイクルとして、1日1回600mgが投与された。STARTRK-2試験からは37人のROS1変異陽性患者のデータが集められた。用量漸増フェーズ1試験のSTARTRK-1試験から7人、用量漸増フェーズ1試験のALKA-372-001試験から7人のデータが集められ、全体でROS1阻害薬未治療のROS1陽性NSCLC患者53人にentrectinibを投与した。主要評価項目は奏効割合と奏効期間。副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、頭蓋内奏効割合と奏効期間、安全性、忍容性だった。

 患者背景は、年齢中央値が53歳(27-73)、女性が64.2%、アジア人が35.8%、白色人種が58.5%、喫煙歴なしが58.5%、腺癌76.1%だった。前治療歴数0が13.2%、1から2が39.7%、3以上が47.1%、ベースラインで脳病変があったのは43.4%だった。

 データカットオフは2018年5月31日で、観察期間中央値は15.5カ月だった。解析の結果、全体の奏効割合は77.4%(95%信頼区間:63.8-87.7)で完全奏効(CR)が5.7%だった。ベースラインで脳病変があった患者23人においては、奏効割合は73.9%(95%信頼区間:51.6-89.8)でCRはなかった。ベースラインで脳病変がなかった患者30人においては、奏効割合は80.0%(95%信頼区間:61.4-92.3)でCRは10.0%だった。

 奏効期間中央値は24.6カ月(95%信頼区間:11.4-34.8)だった。PFS中央値は19.0カ月(95%信頼区間:12.2-36.6)。生存に関する観察期間中央値15.5カ月で、OSイベントは9件しかおきておらず、OS中央値はNEだった。

 ベースラインでの脳転移について、盲検下独立中央判定が可能だった20人において、頭蓋内奏効率は55%(95%信頼区間:31.53-76.94)、頭蓋内CRが4人で認められた。頭蓋内奏効期間中央値は12.9カ月(95%信頼区間:5.6-NE)だった。

 3試験合わせて355人がentrectinibの投与を受けていた。ほとんどの副作用はグレード1/2で可逆的なものだった。治療関連副作用で投薬中止になったのは3.9%、減量になったのは27.3%、中断になったのは25.4%。重篤な副作用が発現したのは8.5%だった。

<entrectinibがROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺癌を対象に申請>

 中外製薬は2019年03月15日、ROS1/TRK阻害薬entrectinibについて、ROS1融合遺伝子陽性の局所進行または転移性非小細胞肺癌を対象に製造販売承認申請を厚生労働省に行ったと発表した。entrectinibは、2018年12月にNTRK融合遺伝子陽性の局所進行または転移性固形癌を対象に申請されており、2つ目の適応症になる。

 今回の承認申請は、オープンラベル多施設国際フェーズ2試験STARTRK-2と海外で実施された3件のフェーズ1試験(STARTRK-NG試験、STARTRK-1試験、ALKA-372-001試験)の統合解析結果に基づいている。