"uncommon / マイナー"なEGFR遺伝子変異陽性肺がんに対するオシメルチニブの効果

 オシメルチニブは他のEGFR阻害薬と比較して、野生型EGFRへの親和性が低く、変異型EGFRへの親和性が高い(一言でいえば、変異型EGFRへの選択性が高い)ことから、Exon 19やExon 21、T790M以外の変異タイプ(いわゆるuncommon mutation、言い換えればマイナーな遺伝子変異)にも有効なのではないか、場合によっては、むしろuncommon mutationの方がよい治療対象になるのではないかといわれていた。

 今回の論文は、そこに一定の解を与えるものである。

 無増悪生存期間中央値は8.2ヶ月とcommon mutationに対するオシメルチニブの成績を考えるとやや低い気もするが、これは致し方ないところだろう。

 全生存期間中央値がいまだ未到達というのは頼もしい。

Osimertinib for Patients With Non?Small-Cell Lung Cancer Harboring Uncommon EGFR Mutations: A Multicenter, Open-Label, Phase II Trial (KCSG-LU15-09)

Jang Ho Cho et al., DOI: 10.1200/JCO.19.00931 Journal of Clinical Oncology

Published online December 11, 2019.

目的:

 EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者の約10%は、いわゆる"uncommon"な遺伝子変異を有している。今回は、こうした"uncommon"なEGFR遺伝子変異を有する非小細胞肺がんの患者を対象に、オシメルチニブ療法の有効性と安全性を検討した。

患者と方法:

 多施設共同、単アーム、オープンラベル、第II相臨床試験として韓国国内で本試験を行った。患者は組織学的に診断された進行もしくは術後再発のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者とした。EGFR遺伝子変異としてはExon 19欠失変異、L858R一塩基置換変異、T790M一塩基置換変異、Exon 20挿入変異は除外した。主要評価項目は奏効割合とし、RECIST1.1基準を用いて6週間ごとに評価した。副次的評価項目は無増悪生存期間、奏効持続期間、安全性とした

結果:

 2016年03月から2017年10月にかけて、37人の患者が登録された。治療開始後に臨床試験参加の同意を取り下げた1人を除くすべての患者が効果判定対象となった。年齢中央値は60歳で、22人(61%)は男性だった。61%の患者は初回治療としてオシメルチニブを使用した。検出されたEGFR遺伝子変異の内訳は、G719X(19人、53%)、L861Q(9人、25%)、S768I(8人、22%)、その他(4人、11%)だった。奏効割合は50%(36人中18人、95%信頼区間は33-67%)だった。無増悪生存期間中央値は8.2ヶ月(95%信頼区間は5.9-10.5ヶ月)で、生存期間中央値は未到達だった。奏効持続期間中央値は11.2ヶ月(95%信頼区間は7.7-14.7ヶ月)だった。有害事象は発疹(11人、31%)、掻痒(9人、25%)、食欲不振(9人、25%)、下痢(8人、22%)、呼吸困難(8人、22%)だった。

 

結論:

 オシメルチニブは"uncommon"なEGFR遺伝子変異を有する非小細胞肺がん患者において、良好な治療効果と忍容(対応)可能な毒性を示した。