・たばこと泌尿器系のがん

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 折に触れてたばことがんの関係に触れています。

 最近、関わった患者さんが泌尿器系のがんに見舞われることが相次ぎました。

 

 ひとりは外来かかりつけの患者さんです。

 膀胱がん手術の既往がある間質性肺炎の患者さんで、これだけで喫煙経験者とほぼ断定できます。

 側腹部が痛いというのでCTを撮影したら、腎盂がんが見つかってしまいました。

 紆余曲折を経て手術にこぎつけたものの、術後の衰弱が著しく、リハビリ入院してもらいました。

 しかし、リハビリ中にさらに衰弱と腰痛が進み、詳しく調べたところ術後再発した部位から腰椎へ直接浸潤していました。

 本人、ご家族と相談の末、高カロリー輸液・医療用麻薬による疼痛緩和を行いながら在宅療養することになり、最後の誕生日を迎えた数日後に息を引き取られました。

 

 もうひとりは他科に入院していた患者さんです。

 膀胱がん手術の既往があります。

 呼吸器疾患を合併していたため、併診しました。

 退院後に血尿が出始めたとのことで相談に来られました。

 CTで調べたところ、肺結節影の新規出現と尿管の異常を認めました。

 膀胱がんの手術を受けた病院へ紹介したところ、新たに尿管がんが見つかり、肺結節もおそらく肺がんだろうとのことでした。

 

 たばこと因果関係が深いがんは、たばこの煙が直接触れるところと、たばこの煙が血中に吸収され、全身を循環したあとに濃縮・排泄される腎泌尿器系に多いようです。

 以外に思われるかもしれませんが、腎泌尿器系のがんはたばことの因果関係が気道系に増して強いです。

 扁平上皮がんや小細胞がんといったたばこと因果関係の深い肺がんに罹患した方の中には、腎泌尿器系のがんの既往がある方が少なくありません。

 さらには、今回の二つの事例に見られるように、再発・再燃しやすいことも腎泌尿器系のがんの特徴です。

 膀胱がんの手術を受けて、せっかく治ったと思っていたのに、後年腎臓も命をも失うことになるとは、何ともやるせない結末です。