Atezolizumabもやってきた

 2016年8月31日付で、Genentech社のAtezolizumabに関するプレスリリースがあった模様です。

 プラチナ併用化学療法後に病勢進行に至った非小細胞肺癌の患者さんを対象に、タキソテールとの比較第III相試験で全生存期間を有意に改善したということですから、位置づけとしてはオプジーボと完全に競合します。

 オプジーボはPD-1抗体、AtezolizumabはPD-L1抗体ですが、どう使い分けることになるんでしょうね。

 Genentech社はRocheグループの傘下にありますから、我が国では中外製薬がAtezolizumabの販売を展開することになるでしょう。

 AtezolizumabはPD-L1抗体を用いて腫瘍細胞と腫瘍内浸潤細胞を免疫染色して治療効果予測を行うことで知られていますが、さてさて、病理医の先生方が発狂しないような結果だといいのですが・・・。

Phase III Study Showed Genentech’s Cancer Immunotherapy TECENTRIQTM (Atezolizumab) Helped People with a Specific Type of Lung Cancer Live Significantly Longer Compared to Chemotherapy

Wednesday, Aug 31, 2016

 Rocheグループの一員であるGenentech社は、2016年8月31日付で、Atezolizumabに関するOAK試験についてプレスリリースを行った。OAK試験は、プラチナ併用化学療法後に病勢進行に至った進行非小細胞肺癌患者に対して、Atezolizumabとタキソテールの効果を比較する試験だったが、主要評価項目のひとつである全生存期間を有意に改善した。Atezolizumabの有害事象は、これまでに報告されているものと同様だった。Genentech社は、OAK試験の結果全容を2016年中に予定されている学会で報告する予定である。

 Rocheグループの最高医学責任者兼国際開発責任者のSandra Horning博士は次のように述べている。

 「OAK試験の結果は、進行非小細胞肺癌の特定の一群に対して、Atezolizumabが有効な選択肢であることの根拠を加えることになった」

 「肺癌は予後不良な疾患であるが、OAK試験の結果は大いに肺癌患者を勇気付けるだろう」

 「出来るだけ早く、Atezolizumabを治療選択肢の一つとして、患者さんに届けたい」

 米国食品医薬品局は、標準化学療法(白金製剤ベースの化学療法、EGFR遺伝子変異陽性またはALK陽性肺がんに対しては適切な分子標的療法)施行中または施行後に病勢が進行したPD-L1陽性NSCLC患者への投与について画期的治療薬に指定していた。本指定は、重篤または致命的な疾患や症状を治療する薬の開発および審査の促進を目的として導入された制度である。

 Genentech社は、早期もしくは進行非小細胞肺癌患者に対して、Atezolizumab単独、もしくはAtezolizumabと他剤との併用療法に関する第III相臨床試験を計8件行っている。

 OAK試験は、国際多施設共同オープンラベル無作為化第III相試験であり、プラチナ併用化学療法後に病勢進行に至った局所進行もしくは進行非小細胞肺癌患者を対象に、Atezolizumabとタキソテールの効果を比較するものだった。

 主要評価項目は2つあり、

・参加した全患者を対象とした、intent-to-treat解析による全生存期間

・PD-L1発現状態で選択した患者サブグループにおける全生存期間

とした。

 PD-L1発現は、腫瘍細胞(TC)と腫瘍内浸潤細胞(IC)に対する免疫染色で評価した。Roche Tissue Diagnositics社のSP142抗体を用い、免疫染色スコアをTC1/TC1/TC3もしくはIC1/IC2/IC3と分類した。

 副次評価項目は奏効割合、無増悪生存期間、奏効持続期間、安全性とした。

 1225人の患者が1:1の割合で、タキソテール群(75mg/?、点滴静注、3週間ごと)とAtezolizumab群(1200mg, 点滴静注、3週間ごと)に無作為に割り付けられた。Atezolizumab療法は治療効果が持続する限りは、耐容不能な毒性に見舞われるまで続けられた。治療効果に関する初回評価は当初の850人が評価可能となった時点で行い、2回目の評価は1225人全てが評価可能となった時点で行われた。