Care Netの記事を眺めていたら、標記の件が記載されていたので、内容を要約して取り上げてみました。
尿で遺伝子変異検査ができると、患者さんは楽ですね。
血中や尿中に腫瘍DNAが漏出するとなると、それなりに進行した患者さんでないと検出できないかもしれませんが、進行した患者さんほど再生検には困難が伴うので、そこを補うためにはとても有望なアプローチです。
先日、T790Mが検出されたにも拘らず、タグリッソが奏功したのは再生検した病巣のみで、他の部位はあっという間に悪化した、という患者さんがいらっしゃいました。
他の部位は、T790Mとは別の耐性機序に支配されているだろうことが予想されます。
多様な遺伝子プロファイリングを示す腫瘍細胞の中で、どのグループが現在患者さんの体内で優勢なのか、リキッドバイオプシーでそこまで把握できて、治療選択に活かせるようになるといいですね。
細菌培養の結果解釈と同じようなイメージでしょうか。
それにしても、こんな興味深い研究結果が出ているのに、臨床開発を中止せざるを得なくなったrociletinib、なんという悲運でしょうか。
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e851165.html
ASCO 2016 #9001
Wakelee HA, Gadgeel SM, Goldman JW, et al.
Epidermal growth factor receptor (EGFR) genotyping of matched urine, plasma and tumor tissue from non-small cell lung cancer (NSCLC) patients (pts) treated with rociletinib.
・T790M変異による耐性獲得の有無を、組織サンプル、血漿サンプル、尿サンプルを使った場合で比較
・rociletinibの有効性解析サブセット443例を含む、EGFR変異陽性の安全性解析集団548例を対象とした
・540例から組織サンプルを採取
・482例から血漿サンプルを採取
・213例から尿を採取
・血漿検査ではBEAMing法を採用
・尿検査では次世代シーケンサー(Trovagene社、カリフォルニア州サンディエゴ)を採用
・主要評価項目は、組織検査のT790M検出結果をコントロールとした、血漿および尿検査のT790M検出結果
・血漿サンプルと組織サンプルが共に採取できた患者482人のうち、組織サンプルでT790Mが陽性だった患者は387人
・組織サンプルでT790M陽性だった387人のうち、血漿サンプルでも陽性だったのは313人(80.9%)
・血漿検査でT790M陽性となった患者は全部で374人→組織サンプルで陰性、血漿サンプルで陽性だった患者が61人いる
・尿サンプルと組織サンプルが共に採取できた患者213人のうち、組織サンプルでT790Mが陽性だった患者は175人
・組織サンプルでT790M陽性だった175人のうち、尿サンプルでも陽性だったのは142人(81.1%)
・尿検査でT790M陽性となった患者は全部で169人→組織サンプルで陰性、尿サンプルで陽性だった患者が28人いる
・サブセット解析によると、M1aの患者群では、血漿サンプルおよび尿サンプルを用いた場合に幾分感度が低かった
(血漿:56.8%、p<0.001、尿:73.8%、p=0.12)
・組織、血漿、尿のうちどれかでT790Mが検出されると、rociletinibの奏効割合は32〜37%と同等だった
・奏効期間および無増悪生存期間も、T790M検出法に関係なく、ほぼ同等だった。