gefitinibの化学療法併用beyond PDは意味がない-IMPRESS study final

 コンセプトが面白い臨床試験は、仮に残念な結果に終わったとしても、何がしかのインパクトを世の中に残していく。

 IMPRESS試験も、そうした臨床試験に含まれる。

 sEGFRm陽性の進行非小細胞肺がんに対して一次治療でgefitinibを投与し、病勢進行を迎えた後に、二次治療としてシスプラチン+ペメトレキセド併用療法のみを行うか、これに加えてbeyond PDでgefitinibを使い続けるか、というsettingの第III相試験だった。

 beyond PDのgefitinibの効果が期待される中、うまく行けばbeyond PDのgefitinibの有効性が証明され、悪くとも同等に収まるだろうと考えていた。

 ところが、蓋を開ければbeyond PDのgefitinibが有意に化学療法単独に劣る、という惨憺たる有様だった。

 IMPRESS studyの結果が報告されてからと言うもの、gefitinibと化学療法の交互投与だとか、同時併用療法だとかは辛くも検討が継続されているものの、病勢進行後の化学療法併用beyond PDというコンセプトは完全に消え去った。

 そうした意味で、IMPRESS試験は「EGFR-TKIのbeyond PD」というコンセプトが成り立たないことを決定付けた、インパクトの大きな試験である。

 今回のESMO2016では、全生存期間に関する最終解析結果が報告された。

 結果を見れば、T790M陽性の患者群に対するgefitinib beyond PDが大きく脚を引っ張っているようだ。 

 発表者らは結論の項で、

 「T790M陰性患者においては、gefitinib beyond PDはまだ検討の余地がある」

的なコメントを残しているが、T790M陰性患者群においてもようやくプラセボと比肩する程度の成績しか残しておらず、安全性、コスト両面から考えて、これ以上検討する必要はないだろう。

 

1201O - Gefitinib/chemotherapy vs chemotherapy in EGFR mutation-positive NSCLC after progression on 1st line gefitinib (IMPRESS study): Final overall survival (OS) analysis

J Soria, et al, ESMO 2016

背景:

 IMPRESS試験は、gefitinib一次治療後耐性化した患者に対し、gefitinib継続投与+シスプラチン・ペメトレキセド併用化学療法とプラセボ+シスプラチン・ペメトレキセド併用化学療法を比較するものだった。主要評価項目である無増悪生存期間について、シスプラチン・ペメトレキセド併用化学療法へのgefitinib上乗せ効果は否定された。今回は全生存期間に関する最終解析結果を報告する。

方法:

 対象とした患者は18才以上、化学療法歴なし、sEGFRmを有する局所進行もしくは進行非小細胞肺がんの患者で、gefitinib一次治療後に病勢進行に至ったものとした。欧州とアジア太平洋地域の61施設から患者を集積した。G群(gefitinib 250mg/日+シスプラチン・ペメトレキセド併用療法)とP群(プラセボ+シスプラチン・ペメトレキセド併用療法)に無作為割付した。主要評価項目は無増悪生存期間、副次評価項目は全生存期間、安全性とした。事前に設定したバイオマーカー検討として、血漿中のcfDNAを用いたT790M変異の評価も行った。

結果:

 総計265人の患者が無作為割付され(G群133人、P群132人)、175人(全体の66%)の死亡が確認されるまで(2015年11月16日)まで追跡した。死亡者の大半(G群65%、P群55%)は肺がんの病勢進行により死亡していた。全生存期間において、gefitinibの継続投与はプラセボに対して有害だった(ハザード比1.44、p=0.016)。血漿T790M変異状態によるサブグループ解析でのハザード比は、T790M陽性の場合には1.49、T790M陰性の場合には1.15だった。G群に比べて、P群ではより多くの患者が病勢進行後の後治療を受けており(G群 61% vs P群 71%)、後治療でのEGFR阻害薬使用割合も異なっていた(G群 23% vs P群 36%)。gefitinib+シスプラチン・ペメトレキセド併用療法の忍容性は良好で、新規の想定外の有害事象は認めなかった。

結論:

 IMPRESS試験の全生存期間に関する最終解析データから、gefitinib初回治療後に耐性化した患者においては、gefitinibは併用化学療法下に継続投与すべきではないことがわかった。cfDNAを用いた探索的検討において、gefitinib継続投与による生存期間短縮効果はT790M陽性の患者において顕著であり、T790M陰性の患者においては定かではないため、この患者群においては更なる検討が期待される。