免疫チェックポイント阻害薬の話題が花盛りです。
そうした世間の流れはあるものの、NEJ009試験、腫瘍学会のプレナリーセッションで取り扱われてもおかしくない内容です。
EGFR遺伝子変異のある患者には、EGFR阻害薬、化学療法、どちらも漏れなく使うのが長生きの秘訣と考えられています。
ではいっそのこと、最初から併用したらどうか、というシンプルな疑問に答える臨床試験です。
期待通りの結果を残しています。
併用療法の生存期間中央値が52.2ヶ月というのは驚異的です。
もはや5年生存(60ヶ月)も目前です。
また、ゲフィチニブ単剤の生存期間中央値も38.8ヶ月と3年を超えています。
細かい解析結果は見ていませんが、後治療としてオシメルチニブが使えるようになったことが関係しているのでしょう。
・・・と思っていたのですが、共同演者の先生からオシメルチニブ後治療の状況を教えていただく機会がありました。
G群の10%、GCP群ではわずか4%のオシメルチニブ後治療使用割合とのことです。
あらためて、GCP療法の凄みを垣間見ました。
一次治療でオシメルチニブを使うことは、本記事作成時点で我が国ではまだできません。
しかし、一次治療でGCP療法を行うことは、明日の朝からでもできます。
生存期間を1年以上伸ばせる治療が分かったわけですが、それでもEGFR遺伝子変異陽性の患者さんに単剤治療で臨むことは、倫理的に許されるのでしょうか。
少なくとも、併用療法の選択肢があることとその効果を説明することは、担当医の責務だと思います。
なお、今回はPFS2という、G群の治療開始から二次治療後に病勢進行/患者死亡に至るまでの期間と、GCP群の一次治療後に病勢進行/患者死亡に至るまでの期間を主要評価項目に含めています。
なぜそんなことを調べるのかを理解したうえで結果を見ないと誤解を招くので、今回の記事では意識的に割愛しています。これがなくても本試験の意義は損なわれないと判断しました。
Phase III study comparing gefitinib monotherapy (G) to combination therapy with gefitinib, carboplatin, and pemetrexed (GCP) for untreated patients (pts) with advanced non-small cell lung cancer (NSCLC) with EGFR mutations (NEJ009).
Nakamura et al.
2018 ASCO annual meeting abst. #9005
背景:
EGFR遺伝子変異を有する進行非小細胞肺癌患者に対する初回標準治療はEGFR阻害薬単剤療法だが、NEJ005試験(第II相)では同じ患者群に対する治療として、ゲフィチニブ+カルボプラチン+ペメトレキセド(GCP)併用療法が有望な結果を残した。今回のオープンラベル、無作為化、第III相NEJ009試験では、ゲフィチニブ単剤療法に対するGCP療法の、無増悪生存期間、全生存期間における優越性を検証した。
方法:
EGFR遺伝子変異陽性(エクソン19欠失変異あるいはエクソン21L858R点突然変異)を有するIII期 / IV期 / 術後再発非小細胞肺癌と新規に診断された患者を対象に、ゲフィチニブ250mg / 日内服単剤療法群(G群)とゲフィチニブ250mg / 日内服+カルボプラチン 5AUC, 3週ごと+ペメトレキセド500mg/㎡, 3週ごと(GCP群)に1:1の割合で無作為に割り付けた。主要評価項目は無増悪生存期間、全生存期間とした。副次評価項目には奏効割合、安全性、QoLが含まれた。
結果:
無増悪生存期間検証のための条件を満たしたため、2017年9月に中間解析を行った。この時点で344人の登録患者がいたが、両治療群にバランスよく割り付けられていた。無増悪生存期間において、GCP群は有意にG群を上回っていた。解析時点でG群の101人、GCP群の83人が死亡していたが、全生存期間を解析したところGCP群がG群を有意に上回っていた(中央値は52.2ヶ月 vs 38.8ヶ月、ハザード比0.695、p=0.013)。
結論:
NEJ009試験はEGFR遺伝子変異陽性の未治療進行非小細胞肺癌患者に対してEGFR阻害薬とプラチナ併用化学療法を同時併用することの有効性を検証した初の第III相臨床試験だった。