FDAがatezolizumabを承認

 周到な準備の下に、という印象だが、ESMO2016での発表に合わせて、FDAが既治療非小細胞肺がんに対する治療薬としてatezolizumabを承認した。

 抗PD-L1抗体が承認されるのは初めての出来事である。

 承認条件はニボルマブやペンブロリズマブを髣髴とさせる。

 現時点では、初回治療として有効性が示されたのはPD-L1発現>50%の患者集団におけるペンブロリズマブのみで、二次治療ではニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブが並び立つことになった。

 初回治療でペンブロリズマブを使用して病勢進行に至った場合に、二次治療でニボルマブやアテゾリズマブを使うことに意味があるのか、とか、二次治療でICIsを使うときにどれを選ぶべきなのか、とか、今後新たな疑問が噴出しそうである。

 POPLAR試験の結果、アテゾリズマブはPD-L1発現状態が治療効果予測に有効とされていたが、評価方法が非常に複雑で、どの程度実地臨床に持ち込めるのか非常に疑問だった。

 OAK試験の結果、PD-L1発現状態によらずドセタキセルを凌駕する、ということで、実地臨床における汎用性は増したように思われるが、臨床応用可能なbiomarkerによる治療層別化は、cost and benefitの観点からも引き続き考えていくべき問題だろう。

 

 

 

FDA Approves Atezolizumab for Lung Cancer

Jason M. Broderick @jasoncology

Published Online: Tuesday, Oct 18, 2016

FDAは、プラチナ併用化学療法後もしくはsEGFRmやALKrを有する患者が対応する分子標的薬を行った後に病勢進行に至った進行非小細胞肺がん患者に対する治療としてAtezolizumab(Tecentriq)を承認した。

 今回の承認は複数の臨床試験(第II相試験であるBIRCH試験、POPLAR試験、第III相試験であるOAK試験)結果に基づいている。中でも最大規模の試験は第III相のOAK試験で、先般行われた2016年欧州臨床腫瘍学会年次総会で結果が発表された。プラチナ併用化学療法後に病勢進行に至った進行非小細胞肺がん患者に対し、atezolizumabはドセタキセルと比較して死亡リスクを26%低下させた。生存期間中央値は4.2ヶ月改善した。atezolizumabの生存期間延長効果はPD-L1発現状態や組織型に関わらず認められた。

 「Tecentriqは、PD-L1発現状態に関わらず、既治療進行肺がん患者の長期生存に寄与する新たな治療オプションである」

 「TecentriqはPD-L1を治療標的とした最初の、そして現時点ではただひとつFDAに承認されたがん免疫療法である」

と発表者はコメントしている。

 国際オープンラベル無作為化第III相試験であるOAK試験は、プラチナ併用化学療法後に病勢進行に至った局所進行もしくは進行非小細胞肺がん患者1225人を対象とした。PD-L1発現状態は問わなかった。患者はドセタキセル群(75mg/?を3週に1回)とatezolizumab群(1200mg/bodyを3週に1回)に1:1の比率で無作為に割り付けられた。

 両治療群の患者背景に偏りはなかった。患者の年齢中央値は64歳で、全体の61%は男性、18%は非喫煙者、25%は2レジメンの前治療歴があった。37%はPS0、63%はPS1だった。ドセタキセル群のうち、17%は次治療で免疫治療を受けた。

 主要評価項目は患者全体を対象とした全生存期間、およびPD-L1発現度別の全生存期間とした。副次評価項目は無増悪生存期間、奏効割合、奏効持続期間とした。初回評価時は850人を対象とし、二次評価時は全1225人を対象とする予定だった。

 850人を対象にしたintent to treat解析において、全生存期間はatezolizumab群(425人)で13.8ヶ月、ドセタキセル群(425人)で9.6ヶ月だった(ハザード比0.74、95%信頼区間0.63−0.87、p=0.0003)だった。全生存割合は、12カ月時でドセタキセル群41%、atezolizumab群55%、18カ月時でそれぞれ27%と40%だった。無増悪生存期間は両群間で有意差はなかった。無増悪生存期間中央値は、ドセタキセル群2.8カ月、atezolizumab群4.0カ月、ハザード比0.95(95%信頼区間:0.82-1.10)、p=0.4928だった。奏効割合はドセタキセル群13.4%、atezolizumab群13.6%、奏効期間中央値は6.2カ月と16.3カ月となった。

 非扁平上皮がん患者において、生存期間中央値はatezolizumab群(313人)で15.6ヶ月、ドセタキセル群(315人)で11.2ヶ月だった(ハザード比0.73、95%信頼区間0.60−0.89)。扁平上皮がん患者においては、生存期間中央値はatezolizumab群(112人)で8.9ヶ月、ドセタキセル群(110人)で7.7ヶ月だった(ハザード比0.73、95%信頼区間は0.54−0.98)。

 PD-L1陽性患者(TC1/2/3もしくはIC1/2/3)は、腫瘍細胞(TC)もしくは腫瘍浸潤免疫細胞(IC)のうち少なくとも1%以上がPD-L1を発現している患者と定義した。PD-L1陰性患者(TC0もしくはIC0)はこれら細胞のうちPD-L1を発現しているものが1%未満の患者とした。

 PD-L1陽性患者におけるサブグループ解析では、生存期間中央値はatezolizumab群(241人)で15.7ヶ月、ドセタキセル群(222人)で10.3ヶ月だった(ハザード比0.74、95%信頼区間0.58−0.93、p=0.0102)。PD-L1陰性患者では、生存期間中央値はatezolizumab群(180人)で12.6ヶ月、ドセタキセル群(199人)で8.9ヶ月だった(ハザード比0.75、95%信頼区間0.59−0.96、p=0.0205)。

 PD-L1の発現がTCで50%以上、またはICで10%以上(TC3またはIC3)の患者(16%)の解析も行われ、生存期間はより延長した。生存期間中央値は、ドセタキセル群8.9カ月、atezolizumab群20.5カ月、ハザード比0.41(95%信頼区間:0.27-0.64)、p<0.0001だった。

 PD-L1の発現別にOSのハザード比をみると、TC3またはIC3で0.41と良好で、TC2/3またはIC2/3で0.67、TC1/2/3またはIC1/2/3で0.75、TC0およびIC0で0.75で、同様の値となった。

 さらに、atezolizumabの忍容性は良好で、ドセタキセルと比べて良好な安全性プロファイルを示した。12カ月以上治療を継続した患者は、atezolizumab群20.5%、ドセタキセル群2.4%だった。グレード3または4の治療関連有害事象は、atezolizumab群の15%、ドセタキセル群の43%に発現した。有害事象による用量調整、遅延、中止は、atezolizumab群25%、ドセタキセル群36%だった。治療関連死はドセタキセル群の1人のみだった。atezolizumabの免疫関連有害事象(全グレード)の発現率も低く、肺臓炎が1.0%、肝炎が0.3%、大腸炎が0.3%に発現した。新たな安全性に関するシグナルは特定されなかった。atezolizumab群でドセタキセル群より頻度が高かった有害事象は筋肉痛(11% vs 4%)と皮膚掻痒だった(8% vs 3%)。